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40代・50代・60代で考える親の介護費用対策

親の介護は、ある日突然襲ってきます。

 

そして、親の症状が安定するにつれて、次に直面するのが「介護費用をどうするか」という問題です。

 

40代、50代、60代、それぞれの年代によってすべき準備や心構えは少しずつ異なります。

 

しかし、共通して言えるのは、できるだけ早く、そして現実的な視点で備えを始めることが、後悔しないための第一歩だということです。

 

今回は年代ごとに、親の介護費用で何をしておくべきかを具体的にお伝えします。


40代は「情報を集め、話し合う」時期

子どもが40代の場合は、親もまだ比較的元気で、自立して生活している場合が多いでしょう。

 

だからこそ、この時期にやっておきたいのは、「情報を集める」ことです。

 

また、介護は突然襲ってくるので、いつ親が介護になってもおかしくないと考えておくことです。

 

実際、私の場合、親が60歳で倒れ、その後、老老介護(父親が母親を介護する)が必要な状態となりました。

 

当時、私は介護に関する知識が全くなく、どれくらいお金がかかるのかもわかりませんでした。

 

さらに、在宅での老老介護となり、介護保険サービスを使えば1割負担で何でも利用できると思い込んでいました。

 

また、介護保険を利用して食事の準備をお願いしたこともありましたが、親が口に合わず、結局利用をやめました。

 

その結果、外食やお惣菜が増え、食費が予想以上にアップし、家計を圧迫することになりました。

 

このような経験から、40代のうちにやっておきたいことは、「介護に関する情報をしっかりと集めること」です。

 

いざ介護が必要になったときに慌てないために、介護保険制度の基本や利用できるサービス、介護施設の種類、そしてその費用感について、ざっくりとでも理解しておくことが大切です。

 

また、真っ先の相談先は親が住んでいる区域の「地域包括支援センター」です。

 

地域包括支援センターは無料で相談を受け付けており、通常は中学校区ごとに一つ設置されています。

 

親が住んでいる地域包括支援センターを事前に確認しておくと、いざという時にスムーズに相談できるので安心です。

 

さらに、子ども自身も40歳になると公的介護保険の第2号被保険者となります。

 

このタイミングで、制度に関する知識を深めることは大いに役立つはずです。

 

この段階で、親としっかり話をしておくことも非常に重要です。

 

親の資産状況、年金収入、医療・介護への希望、そしてもしものときにどうしてほしいか、これらを元気なうちに聞いておくことで、いざというときに選択肢が広がります。

 

例えば、親が倒れた際に延命治療を希望するのか、治療をどうすべきかという点について家族間で意思の疎通が図れていないと、非常に困ることになります。

 

お金の話は切り出しにくいかもしれませんが、「自分たちが困らないように知っておきたい」と素直に伝えることで、きっと理解してもらえるはずです。

 

ただし、親がまだ元気で働いている可能性が高いこの時期、財産や将来のことを話すのは抵抗を感じるかもしれません。

 

その場合は、無理に聞き出そうとせず、例えば「万一のことがあったときに、私たちがちゃんと対応できるように少しずつ教えてもらえると安心なんだ」といった形で、柔らかく伝えてみましょう。

 

親にとっても、子どもたちが自分のことを真剣に考えてくれていると感じてもらえるはずです。

 

まだ元気なうちは、親がその話を避けることもあるかもしれませんが、無理に聞き出そうとしないことが大切です。

 

「もしものときはどうする?」という質問を、素直に聞くことも効果的です。

 

親にとっても、子どもたちが将来のためにしっかりと準備していることに安心感を感じてもらえるでしょう。

 

また、親が「心配しないでほしい」と言うこともあるかもしれませんが、その場合でもやんわりと「自分たちが困らないように」という気持ちを伝えてみてはどうでしょうか。

 

親の意思を尊重しながらも、将来的な不安に備え、適切な準備を進めておくことが、後々の安心に繋がります。


50代は「具体的な準備を始める」時期

50代になると、親の体力や認知機能の低下が目に見える形で現れることが増えます。

 

「そろそろ危ないかも」と感じるサインが見えたら、具体的な準備を始めるべきタイミングです。

 

私自身も、50歳前後で親がケアハウスに入所しました。

 

それ以前から、同じ話を繰り返すことが増え、「さっき話したばかりなのに」と感じることがありました。

 

さらに、保険や葬儀の話をよくするようになり、「もう年だから」と口にすることが増えてきました。

 

これらのサインを見逃すことなく、認知症の診断を受けることになりました(診断は70歳半ば~後半でした)。

 

まず最初にやるべきことは、親の収支や財産状況を把握することです。

 

親がどのような収入や支出があるのか、また、貯蓄額や保有している金融資産、不動産の有無などを整理しておくことが重要です。

 

しかし、お金の話ばかりに焦点を当てると、親が「自分の財産を狙っている」と感じてしまうかもしれません。

 

そのため、話を切り出すタイミングや言い方には慎重な配慮が必要です。

 

お金の話をすることには抵抗があるかもしれませんが、将来的な支援がしやすくなるよう、親の状況を理解しておくことが大切です。

 

また、親が元気なうちに兄弟姉妹と共に、親の介護に備える話し合いをしておくことも重要です。

 

兄弟姉妹全員で協力し合い、決して一人に負担を偏らせないようにするためのチームワークが必要です。

 

次に、実際に介護が必要になった場合にどれくらいの費用がかかるかを試算してみましょう。

 

介護費用は自宅での介護と施設入所では大きく異なり、要介護度によっても費用は大きく変わります。

 

さらに、介護費用と並行して、自分たち子ども側の生活費や教育費、老後資金とのバランスを考慮する必要があります。

 

無理のない範囲で、どのようにしてその費用を捻出するのか、早期に考えておくことが重要です。

 

場合によっては、親の資産管理をサポートするために、任意後見契約家族信託といった制度の利用を検討することも視野に入れます。

 

認知症が進行してしまうと、財産管理が非常に難しくなるため、元気なうちからこうした準備をしておくことが非常に重要です。

 

これにより、万が一の時にもスムーズに対応できるようになります。

 

また、介護にかかる費用を捻出するために、生命保険を活用するケースもありますが、ここでも無理のない計画を立てることが肝心です。

 

特に、保険を活用する場合は、保険料が高額になりすぎないように注意しながら、適切な保障内容を選ぶことが大切です。


60代は「自分自身の老後も見据えた対策」を

60代になると、自分自身の老後についても真剣に考える時期に差し掛かります。

 

この時期は、親の介護が本格化している場合も多く、親のためと自分たちの将来を見据えたバランス感覚が求められます。

 

この段階で重要なのは、介護にかかる費用を「無理なく、計画的に捻出する」ことです。

 

財産管理を含む対策として、家族信託や任意後見制度などの利用も検討することが有効です。

 

親の年金や預貯金を活用しながら、足りない分をどう補うかを冷静に判断する必要があります。

 

場合によっては、親の自宅を売却して施設費用に充てることも選択肢に入りますが、売却のメリット・デメリットを理解した上で慎重に決断することが大切です。

 

また、親の介護だけでなく、自分自身の将来に備えた資産形成も同時に進めることが求められます

 

親の介護に追われて自分たちの老後資金がなくなってしまうことを避けるため、親の介護費用を「子どもがすべて負担する」のではなく、親の資産を中心に考え、子どもはサポート役に徹するというスタンスが理想的です。


まとめ

40代、50代、60代、それぞれのステージに応じた準備と心構えが、親の介護と向き合う上で大きな違いを生みます。

 

「まだ大丈夫だろう」と先送りにすると、いざ介護が必要になったときに大きな負担となって降りかかってきます。

 

しかし、早い段階で情報を集め、家族で話し合い、具体的な備えをしておけば、いざというときに慌てず、冷静に行動できるのです。

 

40代:情報収集と備えの土台作り

40代は親がまだ元気な時期ですが、いつ介護が必要になるか分からないため、備えの土台を作る大切な時期です。

 

この段階でやるべきことは、介護に関する基本的な情報を集めることです。

 

介護保険制度や利用可能なサービス、介護施設の費用など、介護に関する知識を深めておきましょう。

 

さらに、親と元気なうちに話し合い、親の健康状態や資産状況、希望する介護内容を確認しておくことも重要です。これにより、いざという時に慌てずに選択肢を広げることができます。

 

50代:具体的な準備と費用試算

50代になると、親の体力や認知機能の低下が目に見えて現れることが増えます。

 

この段階では、具体的な準備を始めるべきタイミングです。

 

まずは、親の収支や財産状況をしっかり把握し、介護にかかる費用を試算します。

 

自宅介護か施設入所か、要介護度によっても費用が異なるため、将来的にどれくらいの費用が必要となるかを見積もり、その支援のための計画を立てます。

 

また、兄弟姉妹と連携し、家族全体で協力して介護を支える体制を整えておくことが大切です。

 

場合によっては、任意後見契約や家族信託など、資産管理のサポートを検討することも視野に入れましょう。

 

認知症が進行した際、財産管理が難しくなるため、元気なうちに準備を進めておくことが重要です。

 

60代:自分の介護も視野に入れる

60代に差し掛かると、親の介護と同時に、自分自身の老後の介護も視野に入れるべき時期です。

 

この年代では、自分の老後資金や生活設計を見直し、将来的な支援に備えることが求められます。

 

親の介護が必要となると同時に、自身の健康管理や介護を受けるための準備も重要です。

 

介護保険や医療費の準備をし、必要に応じて、遺言や信託の作成など法的な手続きを検討することも必要です。

 

介護は、精神的にも経済的にも、家族に大きな影響を与えます。

 

だからこそ、親子で納得し合いながら、できるだけ早く「備え」を始めることが大切です。

 

親の「今」を大切にしながら、未来に「安心」を育てていきましょう。

 

そのための第一歩を、今日から踏み出してみませんか。

 

介護は、突然始まるかもしれません。

 

そして、想像以上に長く続くこともあります。

 

そんなとき、「親にも安心を、自分にも余裕を」持ち続けるためには、介護にかかる費用だけでなく、自分自身の暮らしや老後まで見すえた、トータルのライフプランを見直しておくことが欠かせません。

 

 

当事務所では、介護にかかるお金とその備えについて、将来を見据えた「ライフプラン作成コンサルティングサービス」や「介護とお金のそなえプラン」をご提案しています。

 

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また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。

 

メディア掲載実績
私のコメントや情報提供を行った記事が、以下のメディアに掲載されています。詳しくはこちらをご覧ください。

 

【最近のご相談例】

・介護費用がどれくらいかかるのか不安(50代女性)

・親の遺言書・生前贈与について(40代男性)

・資産運用について基本を整理したい(60代女性)など

 

【過去の一部の相談事例】

・介護費用に関連する補足給付について(50代女性)

・医療費控除の概要について(50代女性)

・親の有料老人ホームの費用に関するキャッシュフロー表作成(50代夫婦)

・親の収入や資産から子どもへの援助に関するキャッシュフロー表作成(50代女性)

・親の保険と介護費用に関するご相談(50代女性)

・自宅の民事信託の活用と概要について(50代男性)

・所得控除と介護費用の関連について(60代女性)

・金融機関の解約手続きについてのご相談(60代女性)

・遺産分割協議書の作成に関するご相談(60代女性)

・親の介護費用と一時払終身保険の活用について(50代女性)

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親の介護、準備できていますか?チェックリスト10

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