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介護費用の積立、資産運用のみで大丈夫?

Q)自分が介護になったときの費用全額を「つみたてNISA」のみで準備するのはどうでしょうか。

 

A)万一のことを考えると全額は難しいと感じます。

仮に、若くして介護になれば、介護費用として考えていた「つみたてNISA」を解約しなければなりません(他に緊急資金などで足らない場合など)。そのとき、保有期間が短く、相場が下落時であれば、元本割れの可能性があります。あくまでも長期投資できることが前提で、途中解約をしないのであれば可能かもしれません。若くして介護になる場合に備えて、民間の介護保険への加入も組み合わせて検討するのも一つでしょう。

 

(公財)生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」速報版を参考にし一人当たりの介護費用総額を算出すると約580万円(内訳は、介護に要した費用のうち一時費用の平均は74万円、月々の費用の平均は8.3万円、介護期間は5年1ヵ月をもとに独自試算)になります。あくまでも参考程度と考えて頂ければと思います。また、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安については、厚生労働省 介護サービス情報公表システムをご参照ください。

 

さて、自分の介護費用を身近に感じだすのが何歳くらいからでしょうか。公的介護保険料の支払いが始まる40歳からでしょうか。それとも親や身内が介護になったときに自分の介護を考えるでしょうか。

 

考えだすタイミングは人によって違いますが、50代後半から60代に検討し始めるのではないでしょうか。それまでは、子どもの教育資金、自分が亡くなった後の遺族保障、病気で働けなくなったときの医療保障等、なかなか介護のお金まで手が回らないのが現実ではないでしょうか。しかも、介護は必ず全員が必要になるわけではなく、20~30年先だと考えるからではないでしょうか。

 

そうであれば、「つみたてNISA」の制度を使って、「ドル平均コスト法」で購入しておけば絶対に安心でしょうか。

ドルコスト平均法とは、毎月など定期的に同じ金額を購入する方法です。毎月一定額を購入することによって、価格の安いときに多く購入し、価格が高いときには少なく購入することになります。その結果、購入価格が平均化されます。例えば、金融庁のつみたてNISAのホームページ(つみたてNISA早わかりガイドブック)を参考にすると、保有期間が5年の場合は、元本割れのリスクがあります。一方、保有期間が20年の場合には、元本割れはありません。今後、どうなるかは分かりませんが、長期間保有していれば、比較的利益は出やすいのではないでしょうか。

金融庁 資産運用シミュレーション(例えば、毎月約1.4万円を20年間、5%で積み立てると、約580万円になります。介護費用は約580万円)

 

介護費用が必ず20年~30年後、もしくは、その他に緊急資金や民間の介護保険で費用を捻出できるのであれば、介護費用を「つみたてNISA」を解約せずに捻出することが可能かもしれません(なお、投資なので絶対ではない)。ただし、「つみたてNISA」のみで介護費用を捻出したい場合はどうでしょうか。仮に、5年後などに介護になった場合、「つみたてNISA」を解約して捻出しようとしたときに、下落相場で、元本が減っている可能性もあります。少しでも介護費用が必要なときに、元本が大幅に減っていると大変です。

 

介護費用など総合的に考えて、ご自身にあったお金の置き場所を再検討してみたらどうでしょうか。