こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)・行政書士の河村修一です。
親の老老介護・遠距離介護を実際に経験した立場から、相続手続きや遺言書の作成、財産管理に加え、介護費用の見通しや保険の判断、老後資金の準備まで幅広くお手伝いしています。
「手続きとお金、両方の相談ができる窓口」として活動しています。
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この記事も、そんなお悩みを持つ方のヒントになれば幸いです。
日本人の平均寿命は年々延びており、100歳まで生きることが珍しくなくなっています。
特に80代を迎えた親がいる場合、「この先20年生きたら、どれくらいのお金が必要になるのか?」と不安に思う方も多いでしょう。
以前、こんなご相談をいただきました。
90代半ばの母親が元気で、しかし、私はすでに70代で、自分のことで精一杯なのに、母親が何歳まで元気でいるのか心配というものです。
母親の介護費用は準備してきたものの、仮に有料老人ホームに入って長生きした場合、お金が足りなくなるのではないかと不安だという内容でした。
その気持ちはよくわかります。長生きは嬉しい反面、介護費用の心配は尽きません。
令和5年簡易生命表のデータによると、80歳の男性の平均余命は8.98年、85歳で6.29年、90歳で4.22年です。
女性の場合、80歳で11.81年、85歳で8.33年、90歳で5.53年と、さらに長生きする傾向にあります。
つまり、100歳まで生きることは決して大げさな話ではないのです。
本記事では、80代の親が100歳まで生きた場合にかかる介護費用と、今からできる準備について解説します。
介護費用はコントロールできない「介護期間」によって大きく変わる
介護費用は、必要な介護の内容によって大きく異なります。
自立して生活できる期間が長ければ費用は少なくて済みますが、要介護状態が長引くと、その分費用がかかります。
つまり、「毎月の介護費用」×「介護期間」です。しかも「介護期間」はコントロールできないのです。
たとえば、要介護2以上になると訪問介護やデイサービスの利用が増え、月額の自己負担額が数万円単位でかかることが一般的です。
施設に入所する場合、特別養護老人ホームなどの公的介護保険施設であれば比較的低コストですが、有料老人ホームでは入居一時金が数百万円、毎月の費用が20万円以上かかることも少なくありません。
なお、有料老人ホームの費用は地域によって異なるため、地域ごとの状況も考慮する必要があります。
親の介護費用を準備するためには、まず年金や貯蓄の状況を把握し、どの程度の資金を確保できるかを確認することが大切です。
例えば、80代で独居の親が85歳までは自宅で生活し、その後介護が必要になり、90歳から特別養護老人ホームに入所する場合を考えましょう。
90歳から100歳までの10年間、月額15万円の施設費用がかかるとすると、合計で1800万円になります。
さらに、医療費や家族の訪問交通費などの諸費用が月3万円かかると仮定すると、介護費用だけで2000万円以上かかることになります。
年金収入が手取りで月額14万円の場合、年間で168万円、10年間では1680万円となります。
しかし、90歳以降の10年間で約500万円の不足が見込まれるため、預貯金や資産の活用を検討する必要があります。
また、仮に有料老人ホームなどで毎月30万円かかった場合はどうでしょうか?
90歳以降の10年間で約2000万円弱の不足が生じることになります。
特に持ち家がある場合、積極的に自宅を売却したり賃貸に出したりすることで、資金を確保する可能性が強くなります。
なお、特別養護老人ホームなどの公的介護保険施設に入所している場合、自宅を売却して預貯金が増えると、補足給付を受けている方には注意が必要です。
預貯金額が一定の金額を超えると、補足給付が適用されなくなることがあります。
公的施設に入所する場合には、このような制度があることを念頭に置き、資産の管理にあたっては十分に考慮することが重要です。
介護費用を抑えるためには、軽減制度を最大限に活用することが欠かせません。
例えば、高額介護サービス費制度を利用すれば、介護保険の自己負担額に上限が設けられ、一定額以上の負担が軽減されます。
その他にも補足給付がありますが、住民税課税世帯の場合は対象外となり、詳細を確認することが必要です。
また、所得税や住民税の負担を軽減する方法として医療費控除や障害者控除があります。
特に、障害者控除は障害者手帳を持っていない場合でも、一定の要件を満たせば適用される可能性があるため、お住いの自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
※参考 サービスにかかる費用 厚生労働省
増加の一途をたどる認知症への対策は最重要。
さらに、認知症対策は非常に重要です。
認知症が進行すると、銀行口座の管理や不動産の売却などが困難になり、親自身の財産から介護費用を支払うことができなくなるリスクがあります。
たとえば、親が金融機関の窓口で何度もキャッシュカードや通帳、印鑑を紛失したことを届け出るような認知症特有の行動を取った場合、銀行口座が凍結される可能性があります。
これによって、預金の引き出しや解約ができなくなる恐れがあります。
しかし、口座引き落としや振り込みなどについては従来通り行える金融機関も多いと思われますので、詳細については金融機関に確認することをお勧めします。
もしも、このような状況が発生すれば、親の口座から介護費用の支払いができなくなり、子どもが立て替えて支払う必要が出てきます。
その場合、預貯金の管理や解約を行うために、法定後見制度を利用することが一般的です。
成年後見制度に関する令和6年1月から12月までの「成年後見関係事件の概況」でも、申立ての動機として最も多いのは「預貯金等の管理・解約」となっています。
実際に、相談者の中にも親の口座からお金を引き出せなくなり、成年後見制度の利用を考えていた方がいらっしゃいました。
しかし、結局その方は制度を利用しませんでした。
その理由は、後見人として全く知らない専門職が選ばれる場合があることや、毎月の報酬が発生すること、さらに制度を自由に終了できない点がネックとなったためです。
このように、多くの方が誤解している点は、成年後見制度を利用する目的が達成されれば終了できると思っていることです。
実際には、基本的には本人が亡くなるまでこの制度は続くことを理解しておく必要があります。
任意後見制度や民事信託の利用が効果的
これを防ぐためには、任意後見制度や民事(家族)信託の準備が有効です。
任意後見制度を利用すれば、元気なうちに信頼できる家族や専門家を後見人として選び、将来の財産管理や身上保護を任せることができます。
また、民事(家族)信託を活用することで、親が認知症になった場合でも、事前に決めた家族が資産を管理し、スムーズに介護費用を捻出できるようになります。
【任意後見制度とは?】
任意後見制度は、認知症などで判断能力が不十分になった場合に備え、事前に信頼できる代理人(任意後見人)を選び、生活・療養看護・財産管理などの事務を任せる制度です。
契約は公正証書で作成し、費用は約2万~3万円かかります。
さらに、任意後見が開始されると、裁判所が選任する任意後見監督人が付き、監督人への報酬(本人の財産額によって異なる)としておおむね毎月1万~2万円程度の費用が発生します。
【任意後見制度のポイント】
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任意後見が開始されると、後見人は任意後見監督人の監督下で業務を行う
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被後見人の財産を生前贈与したり、収益物件の購入・新築をすることはできない
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相続対策はできない
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医療や介護に関する手続きが可能
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療養看護に関する手続きが可能
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施設の入退所に関する手続きが可能
【任意後見制度のメリット】
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自分の意思で後見人を選べる
本人が元気なうちに、信頼できる家族や専門家を後見人として指定することができます。
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代理権の範囲や報酬額を事前に決められる
任意後見契約では、後見人にどの範囲の業務を任せるかや、報酬額をあらかじめ指定できるため、自分の希望に沿った形で制度を活用できます。
【任意後見制度のデメリット】
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開始時期の判断が難しい
任意後見契約は、公正証書で締結した後、家庭裁判所に後見監督人選任の申立てを行うことで開始されます。しかし、いつ申立てをするべきかの判断が難しいという課題があります。
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費用がかかる
契約の締結には公正証書の作成や登記が必要なため、一定の費用が発生します。
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報告義務がある
任意後見人は、後見監督人に定期的に報告しなければなりません。
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監督人への報酬が発生し、継続する
後見監督人には毎月報酬を支払う必要があり、この費用は任意後見が続く限り発生します。
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本人の契約を取り消せない
法定後見制度とは異なり、本人が行った契約を取り消すことはできません。
【民事(家族)信託とは?】
民事信託とは、親が認知症などで判断能力が不十分になっても、資産の凍結を防いで介護費用などを確保するための財産管理方法です。
【民事(家族)信託のメリット】
- 委託者(親)が判断能力を失っても、受託者(子どもなど家族)が財産の管理や処分を継続できる。
- 自由に契約書の内容を決めて運用できる。
- 後見制度とは異なり、民事信託は初期費用のみで運用でき、継続的なランニングコストがかからない。
- 自宅を売却する際、要件を満たせば「マイホームの3,000万円控除」の特例を利用できる。
【民事(家族)信託のデメリット】
- 信頼できる家族がいないと運用が難しい。
- 本人が元気なうちに財産を任せることに抵抗を感じる人が多い。
- 信託契約の管理や運用方法に一定の制約がある。
- 身の回りの世話は契約内容に含まれないため、別途対応が必要。
- 財産の管理権限が受託者にあるため、他の相続人との間で不公平感が生じ、トラブルになる可能性がある。
- 民事信託の対象とならない財産については、遺言を作成する必要がある。
- 節税の効果は期待できない。
また、介護費用の準備には、親自身の資産だけでなく、家族全体での計画が欠かせません。
特に、介護が始まると仕事をセーブせざるを得ないケースもあり、家族の生活にも影響を及ぼす可能性があります。
介護離職を防ぐためにも、早めに家族で話し合い、役割分担を決めておくことが重要です。
ここまで読んで、「数字の見通しは分かったけれど、家族でどう話し合えばいいか分からない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際のご相談では、
・きょうだいで前提が違う
・お金の話になると感情的になる
・誰が決めるのかで話が止まる
といった理由で、準備が進まないケースが少なくなりません。
当事務所では、介護費用の試算や制度整理を行ったうえで、第三者として家族の話し合いを整理する「家族会議の支援」を行っています。
加えて、親の意思を尊重しつつ、どのような介護を受けるのが理想なのかを明確にしておくと、いざというときにスムーズに対応できるでしょう。
まとめ
~50代のあなたへ~
「親の介護費用」と「自分の老後資金」—両方を減らさない備えを。
100歳までの見通しを、「数字で“見える化」しておくと安心です。
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90〜100歳の施設費・医療費の不足額を試算
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親のお金で支払う仕組み(口座凍結・認知症リスク対策)
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子どもの家計(教育費・老後資金)を守る配分設計
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任意後見・家族信託・遺言の着手順を整理
まずは「何からやるか」を一緒に決めませんか?
👉 初回20分無料相談(オンライン/対面)
👉 J-FLEC対象|ライフプラン作成:9,000円(通常33,000円)
親のお金を正しく使える準備が、自分の老後を守る一番の近道です。
80代の親が100歳まで生きることを想定すると、介護費用は決して無視できる金額ではありません。
しかし、早めの準備と適切な制度の活用によって、経済的な負担を軽減することは可能です。
まずは親の現状を把握し、利用できる制度や資産の活用方法を整理しておくことが大切です。
そして、家族全員でしっかりと話し合い、親が安心して長生きできる環境を整えることが何よりも重要なのです。
