こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)・行政書士の河村修一です。
親の老老介護・遠距離介護を実際に経験した立場から、相続手続きや遺言書の作成、財産管理に加え、介護費用の見通しや保険の判断、老後資金の準備まで幅広くお手伝いしています。
「手続きとお金、両方の相談ができる窓口」として活動しています。
この記事も、そんなお悩みを持つ方のヒントになれば幸いです。
現在、Aさんは要介護2の親と同居していますが、将来的には(要介護5)特別養護老人ホーム(以下:特養という)への入所を考えています。
Aさんは、特養に入所した場合、どのくらい費用がかかるのか調べています。
そこで、すでに特養(ユニット型個室)に入所している要介護5のKさんとBさんの家族に施設代を聞いてみました。
Kさんのご家族の方は「毎月7万円くらいかな~」と、一方、Bさんの家族は「14万円くらい払っているかな~」と言っていました。
どうして同じ特養(ユニット型個室)なのに費用が違うのでしょうか。
特養の費用は預貯金額などで違う
介護保険施設では、入所者の「住民税課税・非課税」世帯や「預貯金額等」によって費用が変わってきます。
特養の費用は、「介護サービス費自己負担額(1~3割)」と「食費・居住費」に「日常生活費」を加えた金額です。
KさんとBさんの収入や預貯金額を比べてみましょう(ともに単身世帯)。
Kさんは若いころから自分で商売をしていて国民年金です。現在82歳のKさんの収入は年金のみで毎月5万円だそうです。
貯金は定期預金に500万円。
一方、同級生であるBさんは、サラリーマンで厚生年金だったため、収入は公的年金のみで18万円だそうです。
貯金は600万円の定期預金があります。KさんもBさんも年金のほかに収入はありません。
※東京23区は年金だけ収入で単身世帯の場合、年金収入が155万円以下は住民税非課税になります。
Kさんは、住民税非課税世帯です。一方、Bさんは住民税課税世帯になります。
介護サービス費用は、KさんとBさんはともには1割負担で同額です。
「食費・居住費」に関して、Kさんは、住民税非課税であるので「食費」の負担限度額は1日あたり390円、「居住費」は880円になります。
結果、1ヶ月(30日)でサービス費用(28,650円)+食費(11,700円)+居住費(26,400円)+日常生活費(10,000円と仮定)で76,750円になります。
一方、Bさんは、「食費」の負担限度額は1日あたり1,445円、「居住費」は2,066円。結果、1ヶ月(30日)でサービス費用(28,650円)+食費(43,350円)+居住費(61,980円)+日常生活費(10,000円と仮定)で143,980円になります(基準額で算出。実際は施設との契約で、加算などによって金額が異なります)。
Kさんは約7.6万円、Bさんは約14.4万円となり、KさんはBさんの半分になっています。
特定入所者介護サービス費
KさんとBさんは、所得の違いがあります。
国民年金だけのKさんは、住民税非課税世帯、厚生年金のBさんは住民税課税世帯。
この段階で、Bさんは特定入所者介護サービス費の対象外になります。
特定入所者介護サービス費とは、介護保険施設への入所やショートステイ利用した場合に、世帯の所得の状況や資産状況により、「居住費」と「食費」が軽減される制度です。
減額を受けるためには「介護保険負担限度額認定書」の申請し提示する必要があります。
なお、デイサービス、有料老人ホーム、グループホーム等は対象外になります。
次に、預貯金額等の判定があります。なお、特養の費用が大きく変わる要因の一つが「補足給付(特定入所者介護サービス費)」です。
預貯金や所得によって食費・居住費の負担が変わる仕組みがあります。
Kさんは、所得要件では、この軽減制度の対象にはなっていますが、預貯金額等が多いと対象外になります。
単身世帯であるKさんは、預金が500万円であるため、制度の対象になります。
特定入所者介護サービス費の対象か否かで費用が変わる
※令和7年8月以降、80万円が80.9万円に変更。
KさんとBさんの倍近く費用が違うのは、特定入所者介護サービス費の対象になったか否かの違いでした。
要件は次の通りです。
Kさんは、年金収入のみの年額60万円なので、第2段階に該当します。
そのときの預貯金額は650万円以下であれば対象となります。
一方、Bさんは、住民税課税世帯のため4段階となり、対象外です。
終の棲家である特養に入所した場合
Aさんの親が特養に入所した場合はいくら費用がかかるのでしょうか。
Aさんの親(財産はほとんどない)が住民税非課税であればKさんと同じように月約7.5万円くらいでしょうか。
ただし、世帯主であるAさん(住民税課税)は現在も会社員として就労しています。
世帯員である親が、住民票を特養に異動せずに特養に入所した場合、非課税のKさんではなく、Bさんと同様の費用になります。
理由は住民票上、同一世帯である子どものAさんが、住民税課税であるため、住民税課税世帯になるからです。
Aさんの親が、特養に住民票をうつした場合は、単身世帯となり住民税非課税世帯となりKさんと同様に費用はおおよそ約7.5万円になるでしょう。
本人だけの所得要件だけではなく、世帯の課税状況も反映されることに加え、資産要件等も加わります。
ここまで見てきたように、特養の費用は、制度や世帯状況によって大きく変わります。
制度や費用の見通しは立ったものの、誰が何を担うのかを家族の中で整理できていないために、その先の判断が止まってしまうケースも少なくありません。
実際の相談では、
・親のお金の管理を誰が行うのか
・施設の入所判断を誰が担うのか
・きょうだいの役割分担等
といった点が整理できていないケースも少なくありません。
介護は、お金の計算だけでなく、親・子・きょうだいそれぞれの立場を整理しながら、冷静に話し合うことが大切になります。
そのため、事実関係を整理したうえで、家族が話し合いやすい形を整えておくことが、将来的な負担やトラブルを防ぐことにつな
がる場合もあります。
まとめ
公的介護施設の費用は、住民税の課税状況や資産状況によって大きく変わります。
特に、特定入所者介護サービス費の軽減措置を利用するには、申請が必要です。
また、住民票を特別養護老人ホーム(特養)に移すことで費用が変わるケースもあります。
特養の費用は、住民税課税状況や預貯金等の状況によって異なります。
介護費用は個々の状況によって大きく異なります。
親の特養にかかる費用が気になる方は、まずは、地域包括支援センターなど行政にご相談ください。
一方で、
-
親の年金で施設費用が足りるのか
-
親のお金の管理をどうするのか
-
きょうだいでどのように負担を考えるのか
といった点は、制度の説明だけでは整理しにくい場合もあります。
そのため、事実関係を整理したうえで家族が落ち着いて話し合える環境を整えることが、将来のトラブルを防ぐことにつながることもあります。
当事務所では、介護費用の見通しや親のお金の整理、家族会議の準備などについてのご相談もお受けしています。
「何から話し合えばよいのか分からない」「家族で話すと感情的になってしまう」といった場合には、状況整理からお手伝いすることも可能です。
親の介護費用や財産管理、きょうだいの役割分担などを整理する 「家族会議の整理相談」を行っています。
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