「電話ひとつ」で大きく生活が変わります。
介護が必要になったとき、親を自宅で介護するか、施設に入所させるかという選択に迫られる場面がやってきます。
私自身、親の介護(いわゆる「老老介護」)を経験した中で、「事前に相談できる相手を見つけておくこと」や「経済的な準備の重要性」を痛感しました。
特に、40代後半から60代の子世代は、親が70~90代という高齢に差し掛かっており、いつ介護が必要になってもおかしくない年代です。
さらに、仕事や生活の関係で親と遠距離で暮らしているケースも多いため、「介護が始まったときにどう支えるか」を早めに考えておくことが大切です。
もし、遠距離で直接介護ができない場合でも、相談先や介護者支援の団体などを事前にリサーチしておくことは非常に有効です。
そして、経済的な備えも欠かせません。
親の財産状況を把握しておけば、子ども世代がどの程度の支援をすべきか判断しやすくなります。
私の実体験でも、母が要介護3となったとき、父がどれだけ大変だったかを今になって強く実感しています。
母は言葉がうまく話せず、体も思うように動かせない状態でした。
介護を担った父は、それまで家事をほとんど母に任せていたため、掃除、洗濯、食事の準備など、何もできない状況からのスタートでした。
中でも大変だったのが、「食事の支度」と「夜中のトイレ介助」です。
父は料理をした経験がなかったため、最初は外食やお惣菜中心の食生活に。
介護保険を使って買い物代行や調理支援サービスも利用しましたが、母の食欲が低下していたことや、味付けが合わなかったことからサービスの継続は難しくなりました。
母は一日中ベッドで過ごすことが多く、気分転換を兼ねて外食に連れ出すこともありましたが、その分、食費などがかさみ家計は圧迫されました。
また、夜中に母がトイレに行く際には、必ず父が起きて付き添う必要がありました。
このような生活が続くうちに、父は身体的にも精神的にも疲れ果てていきました。
加えて、母自身も「話したいのに話せない」「体が思うように動かない」というストレスを抱え、それが父への言動に表れるようになりました。
結果として、父はうつ病と診断されてしまいました。
介護が始まると、それまでの平穏な日常は大きく変化します。
精神的・経済的な負担は想像以上で、介護する側・される側の両方が深いストレスを抱えることになります。
しかも、親は「子どもに迷惑をかけたくない」という思いから、そのような苦しい現状をなかなか口に出しません。
もし、近くに住んでいれば、もっと早く変化に気づき、手を差し伸べられたかもしれません。
しかし、子どもが遠くに住んでいる場合、老老介護では限界があります。
共倒れを防ぐためにも、子ども世代は早い段階で何らかの対策を講じる必要があります。
この経験を通して私は、介護が始まる前に「備えておくこと」の重要性を改めて実感しました。
介護の負担を軽減するための準備とは

介護保険サービスを利用する際、65歳以上の方には所得に応じて1割~3割の自己負担が発生します。
ただし、介護費用の支払いは原則として子どもが負担するのではなく、親の収入や財産から支払われることになります。
親が介護状態になると、親の財産や収入を活用して必要な介護サービスを受けることが基本です。
さらに、介護保険サービスの自己負担額を軽減するための制度も複数存在します。
これらの制度をうまく活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。
代表的な制度には以下のようなものがあります。
介護保険サービスを利用する場合、自己負担額が一定の金額を超えた際にその超過分が払い戻される制度です。
この制度を利用するためには、最初は市区町村への申請が必要です。
自己負担の上限額は、所得に応じて異なります。
例えば、住民税課税世帯(一般世帯)では上限が44,400円、非課税世帯では24,600円(世帯全体)または15,000円(個人)となっています。
- 高額医療・高額介護合算制度
医療保険と介護保険の両方で自己負担が発生した場合、その合計額が一定の金額を超えると、その超過分が払い戻される制度です。(※毎年8月1日~翌年7月31日の12か月で計算)。
この制度は、年間単位で計算され、医療費と介護費用を合わせた自己負担額が上限を超える場合に適用されます。しかし、同じ保険者でないと合算できないため、注意が必要です。
例えば、78歳の夫と73歳の妻の場合であれば、夫は後期高齢者医療保険制度で、妻は国民健康保険の場合は合算できないことになります。
介護保険施設への入所やショートステイ利用時に、世帯の所得や資産状況により居住費や食費が軽減される制度です。この制度を利用するためには、介護保険負担限度額認定書を申請する必要があります。なお、デイサービス、有料老人ホーム、グループホーム等は対象外になります。
- 特別障害者手当
常時特別な介護を必要とする重度の障害者に支給される手当です。支給額は月額29,590円(2025年度)で、介護施設に入所している場合や長期入院中の方は対象外となります。なお、手続きとして障害者福祉係または福祉事務になります(※所定の診断書が必要で、要介護認定とは異なります。
※令和7年5月6日更新
事前に「相談できる相手」を見つけておこう

「介護が必要になったら、どうすれば良いか?」
実際に介護が始まる前に、信頼できる相談先を見つけておくことは非常に重要です。
まず最初に思い出していただきたいのが、地域包括支援センターです。
ここでは、高齢者の介護や困りごとなどについて家族の方でも相談できるため、早めに情報を得ておくことで、その後の負担を大きく軽減できます。
また、介護には経済的な負担も伴います。
原則として、介護費用は親の財産から支払われるため、事前に民事(家族)信託などを活用して資産管理の仕組みを整えておくことも、有効な対策のひとつです。
ただし、家族信託にはメリットだけでなくデメリットもあるため、導入にあたっては専門家に相談し、慎重に検討することが大切です。
まとめ

介護が始まると、日常の生活は大きく変わります。
しかし、事前にしっかりと準備をしておくことで、精神的・経済的な負担を少しでも軽減することが可能です。
早い段階で、親のお住いの地域包括支援センターや相談できる相手を見つけておきましょう。
また、将来の介護に備えて経済的な準備も進めておくことが大切です。
介護は突然始まることも多く、完全に予測することはできません。
それでも、事前の備えがあれば、いざという時に落ち着いて、安心して介護に向き合うことができます。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
メディア掲載実績
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