次のようなケースがあります。Aさんの親御さんが入院されていたのですが、病院から退院予定日を告げられたそうです。
そこで直面したのが、「自宅に帰って在宅介護をするのか、それとも施設に入所するのか」という選択でした。
親御さんは「自宅に帰りたい」と強く希望されていたそうですが、ご家族としては在宅介護は現実的に難しいと感じていました。
また、病院側からも「この状態では自宅での介護は厳しいでしょう」と言われたとのことです。
そこで、ご家族は病院のスタッフからも親御さんに丁寧に説明してもらい、何とか施設入所について本人の了承を得ることができました。
そうなると、次は「どの施設に入れるか」を決めなければなりません。
ご家族はすぐにネットなどで介護施設を調べ、検索結果に出てきた紹介会社のホームページから資料請求や施設見学を申し込み、そのまま契約まで進めていました。
そのお話を聞いて私は、ふと気になりました。
「公的な介護保険施設も含めて選択肢を検討したのだろうか?」「有料老人ホームの費用や重要事項説明書も事前に確認しているのだろうか?」と。
もちろん、そうした情報を整理しながら進めていたのかもしれません。
でも同時に、私はある大事なことに気づきました。
それは、「多くの人は、じっくり比較する余裕なんてない」という現実です。
つまり、そういった切迫した状況のなかでは、「とにかく早く、現実的に対応できる方法を選ぶ」ことが最優先になる。
それが多くのご家族の本音ではないでしょうか。(※実例をもとに分かりやすく内容を変えて、一般論として記載しています:想定事例)
費用の細かい比較より「今、決められるか」が優先される

介護施設を探す場面というのは、基本的に「急に訪れるもの」です。
病院から「そろそろ退院を」と言われてから動き出すケースが多く、すでに家族は仕事や生活に追われていて、十分な時間をかけて情報を集めたり、複数の施設をじっくり比較する余裕はほとんどありません。
「今すぐ」「早く」「親が納得する場所で」「予算内ならOK」という条件が揃えば、それ以上を深く掘り下げないまま決めてしまうケースが少なくないのです。
介護施設の紹介所を利用すれば、希望エリア・予算・入居時期を伝えるだけで候補が絞られますし、無料で見学手配までしてくれる。
そのスピード感や便利さに助けられている方も多いでしょう。
ですが、ここに落とし穴があることも事実です。
「費用が範囲内」でも安心とは限らない

紹介所で紹介された施設の初期費用や月額費用が「予算の範囲内」に見えても、実際に入居が始まると、予想外の支出が発生することがあります。
たとえば、医療費やおむつ代などの実費負担、外出付き添いのオプション費用などです。
こうした見落としやすい費用が積み重なることで、「思ったよりも費用がかかる」と感じる方が少なくありません。
それでも多くの方は、「もう入居してしまったから仕方ない」と受け入れてしまいます。
このように、入居後に気づくことは後悔につながりかねません。
もし契約前の段階で、中立的な専門家(有料老人ホームから紹介手数料を受け取っていない立場の専門家)に相談していれば、将来の費用総額をある程度見積もったうえで、重要事項説明書を一緒に読み解き、介護施設の見学にも同行することで、長期的に無理のない施設選びができる可能性があります。
ほんの20~30分で、後悔を防げる可能性がある

私が今、強く感じているのは、「契約前のわずかな時間こそが、相談のベストタイミング」だということです。
施設を探し始めたばかりでも、もう契約の一歩手前でも構いません。
「このまま契約して本当に大丈夫?」「支払いは今後どうなる?」といった不安を解消するために、たった20~30分でも、中立的な専門家にポイントだけ相談してみてはどうでしょうか。
施設の選び方や費用の見通し、重要事項説明書のチェックポイントなど、短時間でも「聞いてよかった」と思える情報が得られる可能性は十分にあります。(※重要事項の見方:ブログ)
もちろん、すべてを30分で網羅するのは難しいかもしれません。
ですが、紹介業者のサポートに中立的な視点を少し加えるだけで、安心感は大きく変わるのではないでしょうか。
また、すでにご家族の方が重要事項説明書などをしっかり読み込まれている場合は、紹介業者と効率よく施設を探すことも可能です。
ただし、重要事項説明書の見方がわからなかったり、調べる時間がない場合は、中立的な専門家に少しだけ相談するのも良いと思います。
あるいは、がっつりご家族の代わりに動いてくれる専門家に依頼するという選択肢もあります。
さらに、多くの紹介業者は施設の特徴や空き状況は教えてくれますが、個々の家計や将来の生活設計に踏み込んだアドバイスはできません。
当事務所では中立的な立場から、保険や金融のことも含め、有料老人ホーム選びの支援を行っています。
中立的なFP兼行政書士として、冷静かつ客観的にアドバイスを差し上げることが可能です。
まとめ
親の退院が迫る中、「在宅介護か、施設入所か」という選択に直面するご家族は少なくありません。
多くの場合、十分な時間がないまま、急いで施設を探し、契約を進めてしまうケースが多いのが現実です。
紹介会社の便利なサポートに頼るのは自然な流れですが、「予算内だから安心」とは限らず、見落としやすい実費や将来的な負担に後悔することもあります。
そんなときこそ、契約前の「たった20〜30分」を使って、中立的な専門家に相談することが、後悔を減らす最善の方法になり得ます。
施設の選び方や費用の見通し、重要事項説明書のポイント確認など、短時間でも「聞いてよかった」と思える情報を得られる可能性があります。
もちろん、すべてを30分で網羅するのは難しいかもしれません。
ですが、「今、気になっている点だけを整理する」「決断前に一歩立ち止まる」だけでも、選択を冷静に見直すきっかけになるはずです。
当事務所では、紹介手数料を受け取らない中立の立場で、有料老人ホーム選びに関するご相談を承っています。
将来にわたって安心できる施設選びのために、ぜひご相談ください。
財産管理や将来の介護資金準備の重要性
介護費用の問題だけでなく、親の財産管理や遺言作成、将来の介護資金の準備も非常に重要です。
介護施設の選び方や費用に不安があれば、財産管理や遺言についても含めて専門家に相談することをおすすめします。
当事務所でも専門的な視点から最適な解決策をご提案しますので、どうぞお気軽にご相談ください。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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