親が高齢になり、介護が必要になることは避けて通れない現実です。
特に40代後半から50代に差し掛かると、突然「親の介護」という現実が目の前に現れ、どうしたら良いのか分からなくなる方が多いでしょう。
自分自身の生活や仕事も忙しい中で親の介護をどう進めるかは、大きなストレスや不安を伴います。
また、親が元気なうちはなかなか考えないものですが、急な体調の変化や事故、認知症の症状が現れると、すぐに介護施設の選択が必要になります。
特に有料老人ホームへの入居は、金銭的な負担も大きく、何より親が実際に過ごす場所ですから、選ぶ際には慎重さが求められます。
今回は、40代から50代の方々が親の介護を考えた際に、どのようなポイントを押さえて有料老人ホームを選べば良いのか、失敗しないための注意点についてご紹介します。
実際に、ある娘さんからこんな相談を受けました。
認知症を患っている親をホームに入居させたものの、6ヶ月も経たないうちに体重が激減してしまったため、結局、違う有料老人ホームに転居せざるを得なかったとのことです。
最初にホームを選ぶ際には、スタッフの一生懸命な姿や施設長のお人柄を重視して、できる限り慎重に選んだそうです。
しかし、入居後にスタッフの退職や異動が頻繁にあったことが、親の体調や生活に大きな影響を与えたのではないかと感じているとのこと。
最初は良かったものの、施設の運営が安定していなかったことが原因だと振り返っています。

有料老人ホーム選びの3つのポイント
親の介護をどの施設で行うかを選ぶ際に重要な点は、以下の3つです。
場所
親が介護が必要な状態になった時、なるべく家から近い施設を選ぶことが理想的です。
家から遠くの施設に入居させると、訪問にかかる時間や交通費が増え、訪問頻度が低くなりがちです。
これでは、親が孤独に感じたり、寂しい思いをすることが考えられます。
そのため、施設選びでは、親の住んでいる場所からアクセスが良い施設を選ぶようにしましょう。
頻繁に会いに行ける距離感が大切です。
お金
ゆとりある資金計画です。
入居費用はもちろん、月々の利用料や必要なオプション費用についてしっかりと計算する必要があります。
特に、通院の付き添い介助費用や居室の配膳、さらに、手厚い介護を希望する場合には、追加費用などがかかる場合があります。
また、万が一、入居中に長期入院が必要になった場合、ホームの月額料金と入院費用が二重にかかってしまう可能性もあります。
最悪の事態を想定して、契約書や重要事項説明書に記載されている内容をしっかり確認することが大切です。
入居時に発生する前払金や、月々の費用を見積もることで、資金計画に無理がないか確認しましょう。
金銭面で無理をしてしまうと、途中で退去せざるを得なくなる場合もありますので、事前にシミュレーションを行い、現実的な支払い計画を立ててください。
サービス(ソフト面)

実際に施設を訪問し、体験入居をしてみることが非常に重要です。
希望するサービスが提供されているか、またその質が自分の期待に合っているかを確認します。
特に、施設スタッフの対応や、親の表情を見て判断することが大切です。
介護スタッフの退職や異動が頻繁に起こる施設では、サービスの質が安定せず、親にとっても不安が募ることがあります。
スタッフの退職率や勤続年数なども参考に、できるだけ安定した運営をしている施設を選ぶことが求められます。
- スタッフの退職状況とその影響
施設選びで見落としがちなのが、スタッフの退職状況です。
施設の運営が安定していない場合、スタッフが頻繁に退職したり異動したりすることがあります。
これが親の介護にどのように影響するかを、事前に確認しておくことが重要です。
もし、スタッフが頻繁に変わる施設に入居させた場合、親が新しいスタッフに慣れるのに時間がかかるだけでなく、介護サービスの質も安定しません。
したがって、施設を選ぶ際には、スタッフの退職率や勤続年数、施設の雰囲気を確認することが非常に大切です。
退職や異動があった場合、代わりにどのような対応をしているのか、スタッフ間で情報の共有がしっかり行われているかも確認ポイントとなります。
前払金の有りは、長期入居で費用が少なくなります
有料老人ホームに入居したときに「前払金(一時金)の併用」と「前払金(一時金)なし」プランはトータル費用はどちらが得でしょうか。
「前払金」はだいたい5年償却というホームが多く、「前払金を支払っている」場合は、「支払ってない」場合よりも月々の支払いが少なくなります。
「前払金あり」ケースでは、長期入居(おおよそ7年以上)の場合、トータルで「前払金なし」よりも費用が少なくなります。
入居を検討する場合、候補の有料老人ホーム代のシミュレーションをおすすめします。
※各ホームで償却なども違っており、「前払金」の有無でのランニングコストの比較を施設で確認しましょう。また、おむつ代は重たい費用になりますのでシミュレーション時に分かる範囲で加算しておきましょう。
資金計画の簡易計算(予算)

有料老人ホームの入居を考えるときに重要なのは資金計画です。
前払金、月額費用、オプション費用、病気になった場合の費用等あらゆる場面を想像して資金計画を立てること重要です。
今後入ってくる収入や蓄えなどから支払える前払金や毎月支払える費用などが算出できます。
下記が簡易計算になります。
月額支払い可能額=(現預金など資産-前払金)÷入居期間+年金収入
例えば、親御さんの預貯金が1,500万円、前払金が500万円、年金収入が15万円、入居期間が10年と仮定した場合、毎月の支払い可能額は約23万円になります。
※ホーム代が毎月23万円、年金収入15万円のため、毎月8万円の赤字です。ただし、預貯金が1,000万円あるので毎月8万円取り崩し、10年間で960万円となり、10年後に40万円の残額となります。
問題のある有料老人ホームの決め方

問題点を大きく3つわけると次のようになります。
- 有料老人ホーム紹介業者に任せきりで、ご自身の選ぶときの判断基準がない
- 今の施設長やスタッフからしか判断していない(転勤が有無、退職率等の確認)
- 月額使用料の把握が甘い
この3つの中でも、施設長やスタッフの異動等は絶対にわかりません。
ただし、転勤があるホームなのか、退職率などを参考することはできるでしょう。上記3つを最低限押さえてみてはどうでしょうか。
まとめ
有料老人ホーム選びは慎重に行うべきです。紹介業者に任せきりにせず、自分自身の目で施設を確認し、スタッフの対応や施設の雰囲気をしっかり観察しましょう。
また、資金計画を立て、前払金や月々の費用を含めた全体的な支出を把握することが大切です。
特に、介護が必要な親を施設に預ける場合、長期的に安定したサービスを受けるためには、スタッフの勤続年数や退職率などにも注目し、選ぶ際の判断基準をしっかり持つことが求められます。
施設選びを慎重に行い、無理のない資金計画を立て、最適な施設を選ぶことで、親も家族も安心して生活できる環境を提供できます。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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