介護費用について調べると、まず目に入るのが「平均的な費用」です。
生命保険文化センターの2024年度「生命保険に関する全国実態調査」(2025年1月発行)によると、介護にかかる一時費用は平均47万円、月額費用は約9万円、そして介護期間は平均55か月とされています。
しかし、この「平均」が本当に自分のケースにも当てはまるのか、立ち止まって考えることが非常に重要です。
実際の介護においては、平均を大きく上回るケースが少なくありません。
例えば、要介護度が進行すれば、それに伴いサービスの利用料も増加します。
また、在宅での介護が難しくなれば、施設(公的施設か民間施設かなど)に入所する必要が出てきます。
このように、介護の実態は「平均」とは大きく異なる可能性があるのです。
平均費用は目安に過ぎない

たしかに「平均」という数値は、全体像を掴むための参考にはなります。
しかし、自分自身や家族に起きる介護のケースが、その平均に当てはまるかどうかはわかりません。
介護というのは「100人いれば100通り」と言われるほど、ケースバイケースです。
それぞれの状態やニーズに応じて、費用は大きく変動するため、平均値をそのまま当てはめることはできません。
特に、要介護度が上がることで、介護に必要なサービスの範囲が広がり、その分月額費用が増加するのは避けられません。
たとえば、認知症や身体的な障害が進行すれば、より手厚い介護が求められ、費用が予想以上に膨らむことがあります。
また、在宅での介護が難しくなると、施設に入所する選択をすることになりますが、施設ごとの費用差は非常に大きく、その選択が費用に与える影響も無視できません。
加えて、認知症などで病院に入院することになった場合、大部屋ではなく、個室に移動することが求められることもあります。
この場合、個室を利用することで差額ベッド代が発生し、入院費用が大幅に増加することもあります。
このように、病院の環境や施設の選択、そして介護の状態によって、実際の費用が予想以上に高くなることが少なくないのです。
特別養護老人ホーム(特養)は公的な施設であり、比較的低コストで提供されています。
特養では、月額15万円前後が目安として挙げられますが、特養ではおむつ代が施設代に含まれているため、おむつ代における追加費用は発生しません。
ただし、日用品や理美容代、個別に希望するサービス費用などは、自己負担となる点に注意が必要です。
一方、民間の有料老人ホームに入所する場合、状況は異なります。
入居一時金として数百万円が必要になることもありますし、月額費用も20万円から30万円に達する場合があります。
さらに、おむつ代が別途請求されることが多く、予想以上の出費がかさむこともあります。
このように、民間施設では料金が高額になる傾向があり、特に高級な施設では、サービス内容や人員配置の充実度に応じてさらに費用が増えることがあります。
例えば、介護職員又は看護職員1人に対して入居者2人というような配置、つまり、手厚い人員体制をとっている施設では、当然その分費用が高く設定されます。
介護費用の差を認識する重要性
このように、特養(公的施設)と民間施設の費用差に違いがあります。
特養では、一定の規定に基づいた費用が適用されるため、比較的安価でサービスを受けることができますが、民間施設では、その施設のサービス内容や施設の所在地によって、料金は大きく変動します。
特に、民間施設では、施設のグレードや提供されるサービス内容によって、月額料金が20万円〜30万円を超えることも珍しくありません。
また、介護費用は施設の選択だけでなく、介護の必要度にも大きく影響されます。
例えば、一般的には、認知症や要介護度が進行するにつれて、サービスの範囲が広がり、その分費用がかさむことになります。
さらに、介護の状況によっては、24時間体制での支援が必要となる場合もあり、これには追加費用がかかることを念頭に置く必要があります。
認知症は「長期化」と「在宅の限界」を生む

特に費用がかさみやすいのが、認知症による介護です。
アルツハイマー型認知症は「ゆっくり進行し、期間が長くなる」という特徴があり、最初は軽度でも徐々に家族の負担が大きくなります。
しかも、体は元気だとすれば介護者はとても大変です。
このように、認知症介護では「気づいたときには想定を大きく超えていた」というケースが実際にあります。
認知症特有の行動や排泄に関する問題が、介護者に大きな負担をかけることが多く、予想以上の費用がかかることもあります。
早期に介護費用の見通しを立て、準備を進めることが非常に重要です。
例えば、ある60代の女性からご相談を受けた際、お母さまがアルツハイマー型認知症と診断され、最初は在宅で介護をされていました。
認知症が進行するにつれて、排泄に関する問題も深刻化しました。
お母さまはトイレに行きたがるタイミングを自分で認識できなくなり、失禁が頻繁に起こるようになりました。
最初はトイレを案内することができたものの、次第に介護者は常に気を配らなければならなくなり、夜間や外出時にもトイレのタイミングを逃さないようにすることが大きな負担となったのです。
さらに、ある時は部屋の中で失禁があったり、トイレを見逃してしまうことも増え、介護者は汚れた部屋を片付けることに対して強いストレスを感じていました。
このような状況が続くことで、介護者は精神的にも肉体的にも消耗し、日常生活においても常に神経を使いながら介護を行わざるを得なくなりました。
その結果、介護者は一刻も早く施設への入居を考え始めます。
しかし、施設には空きが限られているため、空いている施設を優先的に選ばざるを得ないことが多いです。
そのため、すぐに入居できる施設ということで費用が高額になるケースが見受けられます。
最悪シナリオは「保険」か「預貯金」か、選択肢を考えるための材料になる

では、どう備えるべきなのでしょうか?
一番大切なのは、「最悪のシナリオ」を一度具体的に想像してみることです。
たとえば、85歳から認知症を発症し、在宅で3年間介護した後、施設へ2年間入所すると仮定してみます。
- 一時費用(住宅改修など):47万円
- 在宅3年:月5万円 × 36カ月 =約 180万円
- 施設2年:月14万円〜16万円 × 24カ月 = 約336万〜384万円
- その他:交通費、医療費、オプションサービスなど = 約100万~200万円
合計で684万〜811万円、場合によっては1,000万円近くの出費も見当違いの話ではありません。
この金額を一気に貯めるのは難しいかもしれませんが、保険、預貯金、資産運用、公的支援など、使える選択肢をどう組み合わせて備えるかを検討することはできます。
ライフプラン全体からの「逆算」が必要

ここで重要なのが、「介護費用単体」で考えないことです。
毎年の生活費、年金額、退職金、住宅ローンの有無、他の医療費や老後資金……。
これらすべてを総合的に見たうえで、「自分にとって本当に保険が必要かどうか」を判断する必要があります。
よくあるご相談に「保険に入っておけば安心ですか?」というものがあります。
もちろん、それは一つの方法ではありますが、全体の収支が安定していて預貯金が十分であれば、あえて保険に頼らずとも対応できることもあるのです。
逆に、「足りない」と分かれば、その部分をどう補うか、という対策に変えていくことができます。
「怖い未来」を見ておくことは、安心への第一歩
最悪のシナリオを想像するのは、誰にとっても不安なことです。
でも、その未来を「見ないようにする」ことこそが、一番のリスクでもあります。
「こんなにかかると思っていなかった…」「もっと早く考えておけばよかった…」という声を、私はこれまでに耳にしてきました。
だからこそ、今のうちに考えることが、自分や家族を守る一歩につながります。
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介護の備えは、平均で判断するものではなく、「あなた自身にとってどうか?」を軸に考えるものです。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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