親の介護が始まると、日常生活が大きく変わります。
その中でも特に影響を受けるのが「家計」です。
介護には思った以上にお金がかかり、事前に準備していないと急な出費で家計が圧迫されることもあります。
この記事では、介護が始まると家計にどのような変化があるのか、そして事前に知っておくべきポイントについてFPが解説します。
介護が始まると家計はどう変わる?

介護が始まると、家計には次のような変化が起こります。
特に「支出の増加」と「収入の減少」、そして「貯蓄の取り崩し」が大きなポイントになります。
【毎月の支出が増える】
介護サービス費や介護用品などの購入が必要になり、毎月の支出が確実に増加します。
- デイサービス、訪問介護、ショートステイなど。要介護度や利用回数によっては、支給限度額を超えた分が全額自己負担
- 介護用品費(おむつ代、介護ベッド、車いす、介護食、衛生用品など)
- 住宅改修費(手すりの設置、バリアフリー改修など)
- 医療費(定期的な通院、薬代など)
- 在宅生活が増え、光熱水費の増加など
これらの費用は、介護の要介護度やサービスの利用状況によって異なりますが、毎月数万円~十数万円の負担になることも珍しくありません。
【収入が減る可能性がある】
親の介護のために家族が仕事をセーブせざるを得ないケースも少なくありません。
- 介護のために時短勤務やパート勤務に変更することを選択
- 仕事を辞めて介護に専念する
こうした選択をすることで、世帯全体の収入が減少し、介護費用の負担がより重く感じられるようになります。
さらに、介護離職をすると、再就職の条件が厳しくなる可能性や、自分自身の老後資金が不足するリスクもあります。
そのため、厚生労働省の「介護と仕事の両立支援制度」などを活用し、仕事を続けながら介護をする選択肢を検討することが重要です。
※参照 仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~ 厚生労働省
【貯蓄が減少する】
介護費用のために親の貯金を取り崩すケースも多くありますが、それでも足りない場合、子どもが経済的に支援することになるケースもあります。
また、突発的な医療費や老人ホーム入居費用などでまとまった資金が必要になることもあります。
「親の貯金で足りると思っていたが、予想以上にお金がかかった」という声は少なくありません。
介護期間は数年で終わるとは限らず、10年以上に及ぶケースもあります。
私自身の経験では、母親の介護が始まり、その後父親も要介護となり、トータルで約20年弱にわたって両親の介護に寄り添ってきました。その間、
-
介護保険制度や各種の軽減制度について学び、実際に活用する
-
介護者の会に参加し、同じ境遇の人たちと交流しながら情報を得る
-
実際に過去介護を経験した人の話を聞くなど
といった取り組みを通じて、介護費用に関する不安を少しずつ軽減することができました。
介護は短期間で終わるものではなく、長期に及ぶことも珍しくありません。
だからこそ、事前に正しい情報を集め、家計を見直して備えることが非常に大切です。
親の介護費用のシミュレーションと軽減策

【①公的支援等の軽減制度を最大限活用する】
介護費用を抑えるために、公的支援等の軽減制度を積極的に活用しましょう。
- 介護保険制度:要介護認定を受けると、介護サービスを自己負担1~3割で利用可能。介護保険を使えば、費用の自己負担を抑えられ、ケアマネジャーに相談できるため、家族にとっても安心です。ただし、中には介護保険の利用に抵抗がある方もいますが、周囲の協力を得ながら上手に活用する工夫が大切です。
- 高額介護サービス費制度:一定額以上の介護費用を支払った場合、上限を超えた部分が払い戻される。
- 高額介護合算療養費制度:医療と介護の両方で自己負担額が一定額を超えた分が払い戻される。
- 特定入所者介護サービス費:一定基準以下の預貯金しかない低所得者向けに、公的介護保険施設の「居住費・食費」の自己負担を軽減。
- 医療費控除:介護に関する費用が医療費控除の対象になる場合がある。
- 障害者控除:65歳以上で障害手帳を持っていなくても、一定基準を満たせば障害者控除を受けられる場合がある。基準が各自治体で異なる。
これらの制度を活用することで、負担を軽減できます。
※主な制度のご紹介です。
※参考 サービスにかかる費用 厚生労働省
※参考 国税庁
【②親の資産を上手に活用する】
親が持っている資産を活用することで、子どもの負担を軽減できます。
- 年金の確認:親の年金収入でどこまで介護費用をまかなえるか確認。
- 不動産の活用:空き家になった実家を売却・賃貸することで資金を確保。
- 民事信託の活用:認知症になる前に、親の資産を適切に管理する準備をする。
ただし、自宅を売却する場合、親が戻りたくなったときに住む場所がなくなるなどの問題があるため、慎重に検討する必要があります。
【③介護費用の見積もりを事前に行う】
「どのくらいお金がかかるのか」を事前に知っておくことで、想定外の出費にも落ち着いて対応できます。
- 自宅介護と施設介護の費用を比較
- 親の健康状態や要介護度を考慮して、将来的なシナリオを検討
- 介護費用のシミュレーションを実施
まとめ:介護費用の不安を解消するためにFPに相談を

介護が始まると、家計には大きな影響が出ます。
しかし、事前に準備をしておくことで、その負担を軽減できる可能性は十分にあります。
主なポイントは、
- 介護にかかる費用の目安を知る
- 公的支援制度などの軽減制度を活用する
- 親の資産を上手に活用する
これらを踏まえて具体的な対策を立てておくことで、家計の急な負担を抑え、安心して将来の介護に向き合うことができるようになるのではないでしょうか。
「何から手をつければいいかわからない」「具体的な資金計画を立てたい」とお悩みの方は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも一つの方法です。
当事務所では、介護費用の準備や公的支援の活用について詳しくアドバイスを行っています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
メディア掲載実績
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