80歳を過ぎた親に介護が必要になったとき、まず考えるべきは「介護費用をどう確保するか」です。
しかし、親が高リスクな投資をしている場合、資産の取り扱いに悩む方も少なくありません。
本記事では、投資の見直しポイントと、安全な資産管理の方法について解説します。
※親の介護費用について具体的に相談したい方は、お気軽にお問い合わせください!

【1】親の投資は今どうなっている?まずは現状把握
まず、親がどのような投資を行っているのかを確認することが重要です。以下のポイントをチェックしましょう。
- 投資商品の種類
個人向け国債、社債、株式、投資信託、FX、仮想通貨、不動産など
- 運用目的
長期投資なのか、短期売買なのか
- 現在の評価額
含み益・含み損の状況
- 流動性
すぐに現金化できるか
- リスクの大きさ
値動きが激しいか?安全性の高い商品か?
これらを確認した上で、介護費用として活用するための選択肢を考えていきます。

【2】投資をやめるべき?続けるべき?判断のポイント
80歳を過ぎた親の投資を見直す際には、次の基準を考慮しましょう。
【続けてもいいケース】
- 資産が十分にあり、余裕資金で運用している場合
- 安定した配当金や分配金があり、介護費用の一部に充てられる場合
- 長期保有が前提の低リスク資産(国債や高格付け社債など)が中心の場合
- 流動性がある場合
【売却を検討すべきケース】
- 生活資金や介護費用に必要な現金が不足している場合
- 高リスクな投資(FX、信用取引、仮想通貨など)を行っている場合
- 投資の管理が難しくなり、本人の判断能力がやや低下している場合
- 流動性がない場合
この基準をもとに、親と相談しながら方針を決めることが大切です。
※親の投資や介護費用の管理に不安がある方は、専門家に相談してみませんか?▶ 今すぐFPに相談する

【3】介護費用はどれくらい必要?一般的な目安金額を試算
介護にかかる費用は状況によって全く異なりますが、以下、おおまかな目安になります。
- 介護期間:55カ月
- 介護費用:平均月9万円(在宅介護:平均月5.2万円、施設介護:平均月13.8万円)
- 一時的な費用:47万円
※参照 生命保険文化センター 「2024(令和6)年度 生命保険に関する 全国実態調査」
これらを単純に次のように計算すると約542万円になります。
介護費用=47万円+(9万円×55カ月)
この試算をもとに、投資資産をどのように活用するか検討しましょう。
【4】家族信託・後見制度など「資産を守る仕組み」の活用
- リスクの高い投資を整理し、安全資産に移行する
介護費用の確保が最優先である場合、値動きの激しいリスクの高い資産は売却し、以下のような安全資産に移行するのが賢明です。値動きが激しいため、リーマンショックのようなことが起きると、せっかく介護費用として準備していたお金が大きく目減りし、回復までに時間を要する場合があります。そのためにも、安全資産に変えたほうがいいでしょう。
- 普通預金・定期預金:流動性が高く、いつでも引き出せる
- 個人向け国債:元本保証があり、安定した利息が得られる
- 介護保険の活用:すでに加入している保険を確認し、活用できるものがないか調べる
- 民事(家族)信託や後見制度などの活用
80歳を過ぎた親が投資を続けたいと言っても、判断能力が低下するとリスクが高まります。そうした場合には、親が元気なうちに、以下の制度を活用するのも一つの方法です。なお、2025年2月に民事信託や成年後見制度以外に「家族サポート証券口座」の制度要項が日本証券業協会から発表されています。
家族が資産管理し、必要に応じて売却・運用が可能。ただし、対応している証券会社は限られており、制約や留意事項もありますので、詳しくは証券会社にお問い合わせください。
- 成年後見制度
任意後見制度を活用し、判断能力が低下した場合に、自分で選んだ後見人が資産管理を行う。ただし、成年後見制度では資産を増やすのではなく、財産の維持が基本です。そのため、安全性の高い商品で元本を守ることを優先する必要があります。
こうした制度を活用することで、親の資産を守りながら介護費用を確保できるでしょう。
以下に、「家族サポート証券口座」と、信託・後見制度の違いをまとめました。
家族サポート証券口座 | 家族信託 | 任意後見 | |
代理人・受託者 | 配偶者及び直系卑属(例外 的に兄弟姉妹・甥姪) | 三親等内親族など | 本人が希望する者 (親族等) |
契約書 | 任意代理に基づく契約書 (本人-代理人) | 信託契約書 (委託者-受託者) | 任意後見契約書 |
公正証書 | 必要 | 必要 | 必要 |
代理権の発効時期 | 代理取引開始届提出後 | 信託契約締結後 | 任意後見監督人 の選任後 |
監督人 | 不要 | 不要 | 必要 |
売却・換金 | 可 | 可 | 可 |
運用 | 可 | 可 | 不可 |
手続き費用 | 公正証書作成に係る費用 | 信託契約書及び公正証書作成に係る費用 | 申立て費用 後見監督人の継続報 酬 |
まとめ

80歳を過ぎた親がリスクの高い投資をしている場合、まずは現状を把握し、介護費用を確保するための対策を考えることが大切です。
- 介護費用が足りない場合、資産の売却を検討する
- 安全資産へ移行し、安定した資金管理を行う
- 民事(家族)信託や任意後見制度などを活用し、適切な資産管理をする
親の介護と資産管理は、家族で協力しながら進めることが重要です。早めに話し合いをし、将来の安心を確保しましょう。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
メディア掲載実績
私のコメントや情報提供を行った記事が、以下のメディアに掲載されています。詳しくはこちらをご覧ください。
【過去の一部の相談事例】
・介護費用がどれくらいかかるのか不安(50代女性)
・親の遺言書・生前贈与について(40代男性)
・資産運用について基本を整理したい(60代女性)など
・介護費用に関連する補足給付について(50代女性)
・医療費控除の概要について(50代女性)
・親の有料老人ホームの費用に関するキャッシュフロー表作成(50代夫婦)
・親の収入や資産から子どもへの援助に関するキャッシュフロー表作成(50代女性)
・親の保険と介護費用に関するご相談(50代女性)
・自宅の民事信託の活用と概要について(50代男性)
・所得控除と介護費用の関連について(60代女性)
・金融機関の解約手続きについてのご相談(60代女性)
・遺産分割協議書の作成に関するご相談(60代女性)
・親の介護費用と一時払終身保険の活用について(50代女性)
・老後資金のキャッシュフロー表作成(60代男性)
・年金受給に関するご相談(60代男性)など
※ 「具体的にどうすればいい?」とお悩みの方へ ▶ 介護費用や資産管理の20分無料相談はこちら
親の介護、準備できていますか?チェックリスト10

「親が後期高齢者になったけど、何を準備すればいいかわからない…」
そんな方のために、今すぐできるチェックリストをご用意しました!
✅ 親の年金額と貯蓄額を把握している(はい・いいえ)
✅ 親が要介護になった場合、どのくらいの費用がかかるか試算したことがある(はい・いいえ)
✅ 介護費用をどこから出すのか決めている(親の資産・子どもの援助など)(はい・いいえ)
✅ 親の銀行口座や財産を管理する方法(家族信託・成年後見など)を考えている(はい・いいえ)
✅ 親が認知症になったときの財産管理・手続きをどうするか決まっている(はい・いいえ)
✅ 介護施設に入る場合の費用や条件を調べたことがある(はい・いいえ)
✅ 介護費用の公的支援制度(高額介護サービス費・税控除など)を理解している(はい・いいえ)
✅ 兄弟姉妹と介護費用や負担について話し合ったことがある(はい・いいえ)
✅ 介護が必要になったとき、誰が主に対応するのか家族で合意している(はい・いいえ)
✅ 親と「介護が必要になったときの希望」について話したことがある(はい・いいえ)
✅ 「はい」が0~5つの方へ
介護費用や生前対策が不十分な可能性があります。
いざというときに困らないために、今のうちに対策を進めましょう!