「介護費用はまだまだ先の話」と感じている方は多いでしょう。しかし、介護が必要になるタイミングは突然訪れることがほとんどです。
親の健康が急に悪化したり、思いがけない事故がきっかけで介護が必要になるケースは少なくありません。その際に十分な準備ができていないと、家計に大きな負担がのしかかることになります。
この記事では、介護費用が家庭に与える影響や、今から備えることの重要性、そして具体的にどのように準備を進めるべきかを解説します。
さらに、従業員の方が介護費用への備えを通じて安心して働ける環境を整えるための企業の取り組みについても触れています。
介護費用の現実—平均的な金額とその影響

まず、介護費用の実態を見てみましょう。介護費用は、利用するサービスや介護の形態によって大きく異なります。以下は、生命保険文化センターが実施した「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(全体版)」によるおおよその目安です。なお、特に予測が不可能である介護期間によっては介護費用は大きく変わることに注意が必要です。
- 在宅介護の場合
訪問介護やデイサービスを利用する場合、自己負担額を含めた平均的な費用は月額4.8万円です。ただし、この金額は要介護度やサービスの利用回数によって変わります。
- 施設介護の場合
特別養護老人ホームなどの入所施設では、月額12.2万円が必要とされています。この費用には、食費や居住費も含まれています。
- 一時的な費用
住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用の平均は74万円です。このような初期費用も忘れずに見積もることが大切です。
これらの費用は突然発生することが多く、特に事前準備が不足している場合、生活費や貯蓄に大きな影響を与えます。さらに、長期化する介護では数百万円単位の費用がかかることもあり、家計が圧迫される原因となります。
私自身も、親が60歳で突然倒れた際には全く準備ができておらず、対応に右往左往した経験があります。このような事態に備えるためにも、早めの準備が必要だと痛感しました。
なぜ今から備えるべきなのか
介護費用は「まだ先」と考えがちですが、以下の理由で早めの準備が重要です。
- 介護の突然性
介護が必要になるタイミングは予測できません。急な病気や認知症の発症、思わぬ事故など、家族が対応を迫られる状況は誰にでも起こり得ます。
- 準備期間の確保
介護費用に備えるためには計画的な貯蓄や資産運用などが必要です。早い段階で準備を始めることで、家計に余裕を持たせながら必要な資金を確保することができます。
- 精神的な安心感
介護費用の準備が整っていると、いざという時のストレスが大幅に軽減されます。家族間での金銭トラブルを避けるためにも、早めの対策が重要です。
企業が取り組むべき支援策

従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとっても重要な課題です。以下は、介護費用への備えを支援するために企業が実施できる取り組みの例です。
- 介護費用に関する情報提供
従業員が介護費用の実態を理解し、計画的に準備を進められるよう情報を提供します。例えば、介護にかかる平均的な費用や介護保険制度、公的な相談先などの活用方法についてのセミナーや資料配布が有効です。
- 社内での相談窓口設置
介護に関する相談窓口を設置し、従業員が気軽に情報を得られる環境を整えます。これにより、介護費用の不安解消や具体的な準備方法についてアドバイスを受けることができます。
- フレキシブルな勤務体制の導入
介護が必要な従業員が働き続けやすいよう、テレワークや時短勤務などの柔軟な勤務形態を導入することも重要です。また、具体的な事例※1として、ある企業では従業員が介護休暇を取得しやすい制度を導入し、さらに介護に関する情報を定期的に提供することで、働きやすい環境づくりを進めています。
※1 平成29年度版「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために」厚生労働省
未来への備えを始めましょう
介護費用への備えは、早ければ早いほど安心を得ることができます。従業員が将来に向けた準備を整えることで、企業全体の生産性向上や離職率低下にもつながります。
従業員が安心して働ける環境を提供するために、ぜひ今回ご紹介した取り組みを検討してみてください。
また、介護に備えることで、家族全体の将来設計がスムーズになり、金銭的な不安を軽減することができます。計画的な準備は、働く人々の生活の質を向上させるだけでなく、企業としても持続的な成長を支える基盤となります。
まとめ
介護費用は、家計に大きな負担をもたらす可能性がありますが、早めの準備でその影響を大きく軽減することができます。本記事で紹介した通り、計画的な貯蓄や制度の活用、柔軟な勤務体制の導入など、個人や企業ができる対策はさまざまです。
特に企業は、従業員が安心して働ける環境を整えることで、生産性向上や職場の安定化につながるメリットがあります。
いざという時に慌てないためにも、今日から行動を始めてみてはいかがでしょうか。
未来の安心のため、早めの対策を進めていきましょう。