介護と相続は、多くの家庭で避けて通れない重要なテーマです。
しかし、この2つの課題は、家族間でトラブルが起きやすくなります。
特に介護にかかる時間や費用の負担が特定の家族に集中した場合や、相続財産の分け方について意見が対立する場合は深刻です。
この記事では、家族が揉めないための具体的な準備方法をご紹介します。
1.親の財産状況を把握する

相続トラブルを防ぐためには、家族関係にもよりますが、親の財産状況を家族全員が把握することも一つの方法です。以下の項目を確認しておきましょう。
- 不動産:所有している土地や建物の価値や権利関係。
- 預貯金や有価証券等:銀行口座や証券口座などの残高。
- 借入金や負債:住宅ローンやその他の借金。
- 保険:生命保険や介護保険、医療保険の内容。
親の財産状況を把握することで、相続の分配方法を考える際の土台を作ることができます。特に、親が認知症などで意思表示が難しくなる前に情報を共有することが重要です。
2.家族会議を定期的に開く
家族全員が情報を共有し、意見を交換する場として、定期的な家族会議を開いてみてはどうでしょうか。以下のことを留意することでスムーズに進む場合もあります。
- 目的を明確にする:介護費用の分担方法や親の財産の管理など。話し合うテーマをはっきりさせておくと、感情的な対立を避けやすくなります。
- 全員が参加する:できるだけ全員が平等に意見を言える場を作ります。物理的に集まれない場合は、オンラインでの参加も検討。
- 第三者を交える:必要に応じて、FPや行政書士などの専門家を交えて話し合うことで、冷静かつ公平な議論が可能になります。
相続はあくまで「親の財産」であり、本来は親がどう分けるかを決めるものです。ただし、親が認知症などで判断能力が低下すると、自分の意志で財産管理を行うことが難しくなるため、事前の対策や方針決定が重要になります。
一方、子ども世代が心配しているのは、「介護費用をどう準備するか」という現実的な課題です。
この2つは混同せずに、それぞれの目的を明確にしたうえで話し合うことが大切です。
たとえば、親がすでに介護費用を準備している場合は、「この口座を使ってほしい」といった具体的な指示があると、子どもたちも安心できます。
家族会議の本来の目的は、親の財産をあてにすることではなく、将来の不安を解消し、家族が協力し合う体制をつくることです。
3.遺言者やエンディングノートを準備する

親が遺言書やエンディングノートを用意しておくことで、介護や相続に関するトラブルを大幅に減らすことができます。
- 遺言書:法的効力のある遺言書を公正証書で作成することで、相続財産の分配について明確な指示を残せます。親の意向を具体的に示すことで、家族間の意見の食い違いを防ぎます。
- エンディングノート:法的効力はありませんが、親がどのような介護を望んでいるか、葬儀の方法や相続の希望などを記載できます。家族が親の意思を尊重するうえでの指針となります。
親が元気なうちにこれらを作成しておくことと家族はいざというときに困るごとが減ります。
また、遺言書の公開方法についても考慮が必要です。
「家族に内容を公開する方法」「遺言書を作成した事実だけ伝える方法」「全く家族に知らせない方法」があります。
家族関係や資産状況に応じて、最適な方法を選ぶ必要があります。
親が元気なうちに遺言書とエンディングノートを準備しておくことは、家族の不安を減らし、将来のトラブル回避につながる重要なステップです。
どちらも、「親の思いを家族に伝えるためのツール」として活用していきましょう。
4.介護費用の負担割合を決める

介護費用が多額になる場合もあるため、その分担割合などについて早めに話し合いましょう。
- 全員が公平に負担する方法
家族全員で一定額を負担する仕組みを作ります。
- 負担が偏る場合の配慮
介護を実際に担当する家族(長男や同居している子供など)が負担を多く抱えがちな場合は、その分を金銭的に補填する仕組みを検討します。例:介護を担当した人が多めに相続を受けるよう、遺言書に明記しておく。
- 親の財産からの介護費用の捻出
親が介護状態になった場合、原則としてその介護費用は親の財産から支払います。
しかし、親の収入が少ない場合や資産がない場合、家を売却して費用に充てることも一つの選択肢です。
ただし、この方法では親が「家に戻りたい」と言った際に帰る場所がなくなることに注意が必要です。
こうした問題を避けるため、当面は家族で費用を分担し、後で親が亡くなった後に家を売却する方法を検討することもできます。慎重に議論して決めることが大切です。
5.専門家の力を借りる
介護と相続が絡む問題は複雑なケースが多いため、専門家のアドバイスを活用することが有効です。
- ファイナンシャルプランナー(FP)
家計全体を見直し、介護費用や相続対策の準備方法をアドバイス。
- 社会保険労務士
公的介護保険や公的年金などのアドバイス。
- 弁護士、司法書士、行政書士
- 税理士
相続税対策や財産評価のアドバイス。
専門家を活用することで、家族内での負担軽減や不安解消が期待できます。
まとめ
将来に備え、今から少しずつ準備を始めることが、家族の安心を守る第一歩です。
介護と相続は、事前にしっかりと対策を取ることが大切です。
トラブルを防ぎ、全員が納得できる解決策を見つけるためには、遺言書やエンディングノートを作成することも方法の一つです。
家族間で意見を交換する場を設けたり、専門家に相談したりすることで、よりスムーズに問題を解決できます。
もし「どう始めたらいいかわからない」「専門家に頼りたい」と感じている方がいれば、ぜひご相談ください。
今から準備を進めていけば、将来、家族全員が安定した生活を送ることができます。また、こうした準備は家族の絆を深める良い機会にもなります。
安心できる未来のために、一歩踏み出してみましょう。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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