介護になった場合、主な介護施設は?

親の介護が必要になったとき、「自宅での介護は難しい」「仕事を辞められない」「遠方に住んでいる」などの理由で、介護施設の利用を検討する人は多いです。
しかし、いざ施設を探し始めると次のような悩みが出てきます。
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「どの施設を選べばいいかわからない」
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「費用が高すぎて払えないかもしれない」
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「申し込んでもすぐに入れるとは限らない」
この記事では、介護施設の種類と特徴、かかる費用の目安、費用を抑えるために使える公的制度まで、実体験を交えながら分かりやすく解説します。
介護施設の種類と特徴
介護施設には大きく分けて以下のような種類があります。
それぞれ目的や入所条件が異なり、費用や入居しやすさも変わってきます。

特別養護老人ホーム

公共施設である介護保険施設のうち、特別養護老人ホームのみが原則要介護3以上の方が対象になります。
特別養護老人ホームは人気があり、申し込み後、すぐには入所できない場合があります。
東京都のA市では、入所する方の状況にもよりますが、申し込み後3カ月から半年くらいはかかると言われました。
その間は、介護老人保健施設などに入所して待つのも一つです。
そのときに、入所希望の特別養護老人ホームと同じグループの介護老人保健施設があればその施設に入所がいいと思います。
同グループなので、優先的に特別養護老人ホームに入れる可能性があります。
仮に、すぐに特別養護老人ホームに入所したできた場合は、ユニット型個室で毎月おおよそ14万円~15万円くらいはかかります。
「ユニット型個室」は、プライバシーを守りつつ、ほかの入居者と近所付き合いもできる理想的な介護と考え、厚労省が2000年代初めに、北欧をモデルに個室と共有スペースを組み合わせた「ユニット型個室」を原則としました。
なお、多床室であれば居住費がおおよそ5万円くらい少なくなりますので総額でおおよそ10万円くらいになるでしょう。
また、所得や資産額によって介護保険施設では軽減制度がありますので、低所得者などにとっては助かります(特定入所者介護サービス費)。
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介護老人保健施設(老健)
老健(介護老人保健施設)は、医療と介護の両面からサポートする医療系の介護保険施設です。
病状が安定した高齢者に対して、医学的な管理のもと、看護・介護・リハビリを行い、在宅生活への復帰を支援します。
入所の対象は、原則として65歳以上で要介護1以上の方です。
在宅復帰が目的であるため、入所期間は3~6カ月程度が基本となっています。
特別養護老人ホーム(特養)への入所を待つ間の一時的な受け入れ先としても利用されることが多い施設です。
費用の目安
月額の費用は、6万円~20万円程度。
具体的には、以下のような費用で構成されています:
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介護サービス費(自己負担は1割~3割)
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食費(1日あたり1,445円が基準)
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居住費(多床室で1日437円、ユニット型個室で1日2,066円)
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日常生活費
なお、所得や資産に応じて負担軽減制度があり、一定の条件を満たせば、介護サービス費や食費・居住費の自己負担が軽くなる場合があります。
介護付き有料老人ホーム

東京都のA市にある前払金なしのB有料老人ホームでは、毎月の費用はおおよそ21万円から28万円(税別)に加えて、介護費用(自己負担1割と仮定)、さらに光熱費や理容院代、医療費、歯科治療、アクティビティー代、おむつ代などが1万円~5万円程度を見積もります。
そのため、最低でも毎月30万円程度は準備しておく必要があると考えられます。
仮に半年間入居する場合、合計でおおよそ180万円の負担になる計算です。
有料老人ホームには「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」があり、それぞれ費用面に違いがあります。
介護付き有料老人ホームでは、施設が包括的な介護サービスを提供するため、介護サービス費が一定で、あらかじめ資金計画が立てやすい傾向があります。
一方、住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて訪問介護などの外部サービスを選択して利用するため、介護サービス費は利用状況によって変動します。
そのため、将来の介護の見通しが立っていない場合には、費用が予測しやすい介護付き有料老人ホームのほうが安心かもしれません。
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サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者が安心して暮らせるように設計されたバリアフリー構造の賃貸住宅で、安否確認や生活相談といった「サービス」が付帯していることが特徴です。
主に自立または要支援・要介護の高齢者を対象としており、医療や介護が常時必要な状態ではなく、ある程度自立した生活を送れる方に向いています。
サ高住の大きな魅力は、比較的自由度が高く、自宅のような環境で生活できることです。
介護サービスが必要になった場合は、訪問介護や訪問看護などの外部サービスを契約して利用する仕組みになっており、自分の状態や希望に応じてサービスを選べる柔軟性があります。
費用面では、賃貸住宅と同様に「家賃」「共益費」「生活支援サービス費」などがかかり、月額でおおよそ10万円から20万円程度が目安です。
これに加えて、介護サービスを利用する場合には、その分の費用が別途発生します。
医療費や食費、日用品費も自己負担となるため、トータルでは人によって差が大きくなります。
なお、サ高住は入居時の費用負担が比較的軽く、前払金が不要な物件も多いため、初期費用を抑えて暮らしたい方にとっては選択肢の一つとなります。
ただし、介護体制が充実しているわけではないため、介護度が重くなった場合には、別の施設への住み替えを検討する必要がある点は注意が必要です。
この施設も、老健と同様に、特別養護老人ホームに順番待ちをしている間に入居するケースも少なくありません。
従って、介護度の進行に備えて、将来的な移行先や支援体制についてもしっかりと考慮することが大切です。
主な費用を軽減できる制度・助成

高額な費用に対しては、公的制度を活用することで自己負担を軽くできます。
知らずにいると損をすることが多いですが、対象となればかなりの節約になります。
公的制度を上手に活用することで、費用負担を大きく軽減できるため、利用できる制度があれば積極的に申請することをお勧めします。
高額介護サービス費
介護サービスにかかった自己負担が一定額を超えると、超えた分が払い戻される制度です。
1ヶ月での介護サービス費には自己負担額の上限があります。
例えば、一般世帯では44,400円です。この自己負担額を超えた場合には約3ヶ月後に超えた分が戻ってきます。
ただし、福祉用具購入費、住宅改修費、施設の食費・居住費は対象外です。
また、介護保険サービスの上限を超えた自己負担額も対象外(10割負担部分)になります。
該当しやすい例としては、夫婦がともに介護状態の場合です。

高額介護医療合算制度
医療保険上の同一世帯の被保険者において、医療保険と介護保険の両方で自己負担金が発生し、その合計が負担限度額を超えた場合、その超えた分が払い戻される(※毎年8月1日~翌年7月31日の12か月で計算)。
例えば、一般世帯の場合は56万円が自己負担金の上限になります。

特定入所者介護サービス費

介護保険施設への入所やショートステイ利用した場合に、世帯の所得の状況や資産状況により、「居住費」と「食費」が軽減される制度です。
減額を受けるためには「介護保険負担限度額認定書」の申請し提示する必要があります。
なお、デイサービス、有料老人ホーム、グループホーム等は対象外になります。
特別障害者手当
対象は、次のいずれかの障害に該当し、常時特別の介護を必要とする20歳以上の方です。
- 重度の障害が重複している方(一部、単一障害でも可)
- 日常生活がほとんどできない精神障害のある方
ただし、次のいずれかに該当する方は対象外となります。
- 施設に入っている方(ただし、グループホームや有料老人ホームはOK)
- 病院・診療所に継続して3ヶ月以上入院している方
手当額は29,590円/月(令和7年4月~)で、所得制限などがあり、手続きとして障害者福祉係または福祉事務になります。
なお、所定の診断書が必要で、要介護認定とは異なります。
施設選びで気をつけたいポイント

施設選びでは「費用の安さ」だけでなく、次の点も忘れずにチェックしましょう。
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契約内容をしっかり確認(途中解約の返金条件など)
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職員の数や雰囲気、清潔感
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入居者の様子(施設見学で確認)
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看取り対応の有無(将来も安心できるか)
パンフレットやホームページでは分からない情報は、見学や体験入所で確かめることが大切です。
まとめ
介護施設の選択は、今後の生活や家計に大きく関わる重要な問題です。
高額な費用に不安を感じたときは、制度を活用することで負担を軽くする方法があることを知っておいてください。
特に、住民税非課税・障害者控除・補足給付などは相談者からも「もっと早く知りたかった」と言われる項目です。
介護施設探しで迷っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたやご家族が、安心して過ごせる選択ができるようサポートします。
※令和7年5月13日更新
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
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