認知症の進行と症状について

親がアルツハイマー型認知症と診断されると、症状は徐々に進行していきます。
一般的に認知症の初期(発症から約0年~5年程度)は軽度の段階で、以下のような症状が見られるようです。
・数分から数日前に覚えたことを忘れる
・同じことを何度も繰り返し話す
・物をしまい忘れたり置き忘れたりする
・役所での手続きがうまくできなくなる
進行して中等度から高度中等度(発症から5年程度以降)になると、
・薬の管理ができなくなる
・季節や気候に合った服を選べなくなる
・風呂の温度調整やトイレの使用が難しくなる
さらに高度な段階(10年~15年以降)では、
・同居している家族が分からなくなる
・家でトイレができなくなる
といった症状が見られるようです。
確かに、私の親の場合も同様で、診断を受けてから約6年が経過した頃から「風呂に入らなくなった」「トイレがうまく使えなくなった」といった変化がありました。
認知症介護は在宅か施設か?

このような状態になると、介護を「在宅」で続けるか、「施設介護」に切り替えるか、選択を迫られます。
特に子どもが仕事をしている場合、在宅介護は現実的に難しくなることが多いです。
また、現実的には、親自身は認知症の自覚がなく、「認知症ではないのにどうして施設に入るのか」等理解を示さない場合もあります。
認知症高齢者数の将来推計

政府オンラインによると、65歳以上の高齢者を対象にした令和4年度(2022年度)の調査の推計で、認知症の人の割合は約12%、さらに約16%が認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)に該当すると推計されています。
合わせると約3人に1人が認知機能に問題を抱えている計算です。
また、2022年時点の年齢階級別の認知症の有病率をみると、例えば、
- 80歳~84歳の男性は15.9%、女性は16.9%
- 85歳から89歳の男性は25.2%、女性は37.2%です。
となっており、高齢になるほど発症リスクが高まります。女性の場合、90歳までの生存率が高いため、かなりの割合が認知症を発症している状況です(出所:共生社会の実現に向けた認知症施策の推進 厚生労働省)。
50代や60代の子世代夫婦にとっては、両親ともに認知症になる可能性が十分にあり、長寿時代の認知症問題は避けて通れません。
介護費用は年金だけで賄えるのか?

まずは年金の平均受給額を確認しましょう。
・国民年金(老齢基礎年金)の平均月額は約5万8千円(令和5年度末)
・厚生年金の平均月額は約14万7千円(同上)
【ケース1】国民年金受給者(5.8万)でユニット型個室に入所した場合
80歳の単身のAさん(住民税非課税、預貯金1,500万円あり)が要介護5で特別養護老人ホーム(特養)のユニット型個室に入所すると、
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約10.5万円
・日常生活費:約1万円
合計は約14万4千円。
年金収入との差額は約8.6万円の赤字で、預貯金を取り崩す必要があります。
【ケース2】国民年金受給者(5.8万)で預貯金300万(同条件)
Bさんの場合は、住民税非課税で預貯金300万円のため「居住費・食費」の軽減措置(特定入所者介護サービス費)があります。
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約3.8万円
・日常生活費:約1万円
合計約7万6千円。
年金との差額は約1.8万円の赤字です。
どちらのケースでも、サービス費の上限が高額介護サービス費により約1万5千円となるため、実際には負担が軽減されます。
結果、Aさんは実質約7.3万円の赤字、Bさんは約0.5万円の赤字となります。
【ケース3】厚生年金受給者(14.7万)
80歳のCさん(単身、預貯金ゼロ)が要介護5で特養ユニット型個室に入所すると、
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約10.5万円
・日常生活費:約1万円
合計は約14万4千円で、年金収入の範囲内に収まります。
ただし、各ケースとも各施設との契約のため、施設代が増える場合もあり、あくまでも上記数字は目安になります。

<多床室の場合>
上記の条件と同じであるAさんの場合、
- サービス費(約2.6万円)
- 食費・居住費(7.1万円)
- 日常生活費(約1万円)
- 1ヶ月(30日)合計約10.7万円となり、毎月約4.9万円の赤字で預貯金の取り崩しとなります。
なお、高額介護サービス費で約1.1万円が還付されますので、実質約3.8万円の赤字ですが、預貯金が1,500万円あるので、単純に計算するとおおよそ110歳くらいまで長生きしてもは大丈夫で安心です。
一方、Bさんの場合は、預貯金が300万円なので「居住費・食費」の軽減があります。施設代は、
- サービス費(約2.6万円)
- 食費・居住費(約2.5万円)
- 日常生活費(約1万円)
- 1ヶ月(30日)合計約6.1万円となり、毎月約0.3万円の赤字です。
ただし、高額介護サービス費があるので、実質は、0.8万円の黒字になります。
※住民税非課税の方の場合、途中で預貯金額等が一定額を下回ると特定入所者介護サービス費の対象になりますが、ここでは考慮していません。
まとめ

認知症の親の介護では、在宅か施設かの選択が重要です。
仕事をしている場合は在宅介護は難しく、施設介護を検討するケースが増えます。
施設介護は、公的施設(特養など)と民間の有料老人ホームがあり、公的施設は比較的費用が抑えられる反面、入所まで時間がかかることもあります。
年金収入だけで介護費用をまかないたい場合は、公的施設の利用をまず検討しましょう。
国民年金受給者でも多床室であれば費用を賄える可能性がありますが、ユニット型個室の場合は他の支出(例えば、病気の治療費と合わせてダブルで費用がかかるなど)も加わると負担が増すことがあります。
厚生年金受給者であれば、預貯金がなくても多床室やユニット型個室の費用を賄える可能性が高いですが、場合によっては子どもの支援も必要になるでしょう。
施設費用は施設によって異なるため、具体的な施設に直接確認することが大切です。
財産管理や将来の介護資金準備の重要性
介護費用の問題だけでなく、親の財産管理や遺言作成、将来の介護資金の準備も非常に重要です。
介護施設の選び方や費用に不安があれば、財産管理や遺言についても含めて専門家に相談することをおすすめします。
当事務所でも専門的な視点から最適な解決策をご提案しますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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