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介護が必要になる前に、親の気持ちを聞いておこう

40代・50代の子ども世代にとって、地方に暮らす両親の老後は頭の片隅から離れない大きなテーマではないでしょうか。

 

とくに、自分自身の健康や経済状況に不安があるとき、「将来、介護や生活支援を求められるかもしれない」という思いは、いっそう重くのしかかります。

 

たとえ両親が今は元気で、アルバイトなどで仕事を続けている状況でも、「もしものとき」に備えて考えておくことは、ごく自然なことです。


経済状況を尋ねた子どもと「大丈夫だ」の一言で済ませる親

子どもとしては、自分の老後資金も見通しが立っていない中で、両親に何かあった場合の負担を想定し、前もって準備しておきたいという気持ちは自然です。

 

そのため、思い切って親に年金や貯金について尋ねることもあるでしょう。

 

たとえば、次のようなケースも少なくないでしょう。

 

父親に経済状況を聞いてみたところ、返ってきた言葉は「大丈夫だから」の一言だけ。

 

親としては、「まだ元気なのだから、そんなに心配しなくてもいい」と思っているのかもしれません。

 

けれども、それだけでは子どもにとって不安の解消にはなりません。

 

漠然とした将来への不安を抱えたままでは、気持ちの整理もつかないのではないでしょうか。

 

そこで、子どもの側も話し方や切り口を工夫してみることが大切です。

 

たとえば、「友人の親が介護になって、口座からお金が下ろせずに困った話があった」や、「介護費用が想像以上にかかった」など、具体的な事例や身近な話題をきっかけにして、自然に会話を始めてはどうでしょうか。

 

大切なのは、無理に踏み込んだり、力づくで話を進めようとしないことです。

 

親の気持ちを尊重しつつ、少しずつ歩み寄っていくことが何よりも重要なのです。

 

実際に、こうしたやりとりを重ねる中で、年金額や貯蓄の目安を聞き出すことができたというケースもあります。

 

そして、仮に特養に入所することになった場合でも、親のお金である程度まかなえそうだと分かれば、子どもとしても気持ちに少し余裕が生まれます。

 

しかし、安心したのも束の間、次に見えてくるのは「その先」の心配です。

 

たとえば、父親が亡くなり、高齢の母親が一人暮らしになると、いずれ介護が必要になる可能性も出てきます。

 

また、母親がこれまでお金にあまり関心がなかったり、計画的に管理するのが苦手だった場合、相続した財産を思わぬかたちで使い切ってしまうのではないかという不安もあります。

 

その結果、いざというときに施設入所の費用が足りず、生活すら立ちゆかなくなるのではという心配も現実味を帯びてくる場合もあります。


遺言や後見制度を進めたい子どもと、早すぎるという親

こうした背景から、子どもとしては、父親が元気なうちに遺言書などを作成してもらい、いざというときには母親の生活費や施設費用を子どもが適切に管理できるようにしておきたい、と考えるのは当然のことかもしれません。

 

また、将来の判断力低下に備えて、任意後見制度などの活用も視野に入れて親に提案することもあるでしょう。

 

ところが、父親は「まだ早い」の一点張り。

 

何度か話を持ちかけた結果、「親の生活に口を出すな」と怒られてしまった。

 

そんなケースも少なくありません。

 

親がまだ元気で、現役に近い形で働いているうちから「終活」について話し合うのは、難しいと感じる場面もあります。

 

それでも、子どもとしては、「突然の介護」「急な費用負担」「お金の管理が苦手な母親」といった現実的なリスクを前に、今のうちに備えておきたいと考えるものです。


専門家や第三者の存在が冷静な交通整理になる

親子間で感情がぶつかり合ってしまうと、どちらの言い分も通らず、話し合いがうまく進まないことがあります。

 

そんなときには、信頼できる親せきや、第三者である専門家などの力を借りるのも一つの方法です。

 

冷静に状況を整理してもらい、両者の思いを汲み取りながら落としどころを探っていくことで、感情的な衝突を避けやすくなります。

 

また、「終活」という言葉に抵抗を感じている親であっても、第三者が間に入ることで、冷静に受け入れやすくなるケースもあるでしょう。


兄弟間でも起こる考え方の違いと調整の難しさ

また、介護が始まると、親子間だけでなく兄弟間でも介護方針の違いが浮き彫りになることがあります。

 

たとえば、兄弟の一人は「今すぐ施設に入れたほうがよい」と主張する一方で、もう一人は「施設のランニングコストや生活環境をもっと慎重に確認してから決めたい」と意見が対立することもあります。

 

特に、どちらも責任感を持って親の介護を考えている場合には、こうした衝突は起こりやすいかもしれません。

 

その背景には、それぞれの子どもに事情があり、それが見え隠れしていることもあります。

 

たとえば、仕事の都合や居住地の違い、介護に割ける時間や負担の度合いなどがあり、どちらが正しいとも一概には言えない状況です。

 

こうした意見の食い違いは精神的な負担にもつながり、結果によっては兄弟間にわだかまりを残してしまうこともあります。

 

とくに、想定していた通りに事が運ばなかった場合、「あのときの判断は間違っていた」と互いに責め合ってしまうこともあるかもしれません。

 

介護はある日突然始まることが多いため、何の準備もしていないと、まさにこのような混乱に直面してしまいます。

 

だからこそ、親の意向や財産の状況などを、事前に家族で共有しておくことが、こうしたリスクをある程度回避する手段になるのではないでしょうか。


財産管理と信頼のバランスをどう取るか

さらに複雑なのは、兄弟間に経済的な格差や信頼関係の「ずれ」がある場合です。

 

一方が「親の介護をするから」として通帳やキャッシュカード、実印などを預かると、もう一方が「財産を使い込むのではないか」と疑念を抱いてしまうケースもあります。

 

とくに、それまで親の介護に関わってこなかった兄弟が突然積極的に関与し始めると、どうしても疑いの目で見てしまうことがあります。

 

また、こうした不信感は、過去の些細な行動が積み重なって生じることもあります。

 

実務的には、たとえばキャッシュカードは一方が、通帳はもう一方が管理するなど、お互いが関与できるようにしてお金の流れに透明性を持たせる工夫が考えられます。

 

そして何より大切なのは、こまめな情報共有と丁寧なコミュニケーションです。

 

とはいえ、「それができていれば問題には発展していない」という声もあるでしょう。

 

実際、コミュニケーションをとること自体が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

 

だからこそ、コミュニケーションは小さなことから始めるのがポイントです。

 

たとえば、すでに親の介護を担っているのであれば、日常の様子をLINEなどで適度に連絡したり、親の写真を送ったりして、相手に情報を届けるように心がけましょう。

 

相手からの反応がなくても、まずはこちらから伝えてみることが大切です。

 

こうした小さな積み重ねが信頼関係の土台となり、やがて落ち着いて話し合える関係につながっていく場合もあります。

 

話し合いの場では、「自分の正しさを主張する」のではなく、「お互いの立場や思いを尊重する」姿勢が何よりも大切です。

 

また、信頼できる親せきや第三者の専門家を間に入れて交通整理をしてもらうことも、対立を避ける有効な方法のひとつではないでしょうか。

 

家族間では言いづらいことも、第三者という中立的な立場を借りることで話し合いがスムーズに進むこともあります。


まとめ

親が介護状態になったということは、「いつか」の話がいよいよ「いま」に変わったことを意味します。

 

介護の最中は多忙になりがちですが、それでも親がまだ判断能力を保ち、意思を伝えられるうちに、終活や財産の行方についてしっかり話し合うことは、家族の将来を左右する大切な時間です。

 

親が亡くなったあとに争いになることを少しでも避けるためにも、「親が判断能力があるうちに」「話せるうちに」話し合うことが重要です。

 

この意識が後悔を防ぎ、家族関係を守る大きなポイントになります。

 

できれば介護が始まる前、つまり「元気なうち」に一度話しておくことがベストです。


財産管理や将来の介護資金準備の重要性

介護費用の問題だけでなく、親の財産管理や遺言作成、将来の介護資金の準備も非常に重要です。

 

介護施設の選び方や費用に不安があれば、財産管理や遺言についても含めて専門家に相談することをおすすめします。

 

当事務所でも専門的な視点から最適な解決策をご提案しますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。

 

あなたとご家族の未来の安心をサポートします。

 

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