認知症の親の生命保険は使える?給付金請求・解約手続き・家族ができることをFPが解説

結論からいうと、親が認知症になったからといって、家族が自由に生命保険を解約したり、保険金や給付金を請求したりできるわけではありません。

 

ただし、契約内容や親の判断能力によっては、次の制度を利用できる場合があります。

  • 医療保険などの給付金請求:指定代理請求人制度
  • 解約や住所変更などの契約手続き:保険契約者代理制度
  • これらの制度がなく、本人が手続きできない場合:成年後見制度

なお、指定代理請求人が請求した給付金は、代理人自身のお金になるわけではなく、原則として受取人である親本人のために管理・使用するお金です。

 

まずは保険証券や契約内容を確認し、加入している保険会社に、利用できる制度と手続きの範囲を問い合わせることが大切です。

 

 

指定代理請求制度は、本人に特別な事情があるとき、あらかじめ指定された代理人が本人に代わって保険金・給付金を請求する制度です。一方、保険契約者代理制度は、住所変更や解約など、契約者としての一定の手続きを代理する制度です。利用できる範囲は保険会社や商品によって異なります。


「親が昔加入していた保険があるようなんです。でも、最近は認知症が進んできて、介護費用をその保険から出せないかと思っているのですが、家族が手続きできますか?」

 

高齢化の進行とともに、こうしたご相談もいただくこともあります。

 

親が認知症になると、お金の管理が難しくなり、いざという時に保険を使おうと思っても「契約の壁」にぶつかってしまうケースが多くあります。

 

今回は「認知症の親の保険金は家族が使えるのか?」というテーマについて、知っておくべき制度や事前にできる備えを解説していきます。


こんなお悩みはありませんか?

  • 親の生命保険をこのまま続けるべきか迷っている
  • 解約した方が介護費用に役立つのではないかと考えている
  • 複数の生命保険に加入しているが、本当に必要なのか分からない
  • 保険会社に相談したが、他の選択肢があるのか知りたい
  • 介護費用や相続も含めて、家族全体で判断したい

生命保険会社は、自社の契約内容のメリットやデメリットなどを説明してくれます。

当事務所では、生命保険だけでなく、介護費用・老後資金・相続まで含めて、お客様にとって最適な選択肢を一緒に考えるセカンドオピニオンとしてご相談いただけます。

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認知症と保険契約の“壁”

まず、最初にお伝えしたいのは、生命保険は「契約行為」であり、原則として契約者本人が意思をもって手続きすることが必要だということです。

 

保険には「契約者」「被保険者」「受取人」の3つの立場があります。

  • 契約者とは、生命保険会社と保険契約を結び、契約上のさまざまな権利(契約内容変更などの請求権)と義務(保険料の支払義務)を持つ人。

例えば、解約や受取人変更などの手続きをしたりします。

  • 被保険者とは、その人の生死・病気・ケガなどが保険の対象となっている人。
  • 受取人とは、保険金・給付金・年金などを受け取る人。

しかし、認知症が進行して「契約の内容を理解できない」「自分で判断できない」といった状態になると、意思能力がないと見なされ、保険会社は解約などの手続きに応じてくれないことがあります。

  

※参照 生命保険文化センター 生命保険に関する基礎用語 


指定代理請求人制度という備え

 

医療保険やがん保険、民間の介護保険では、一般的に被保険者本人が給付金を受け取ります。

しかし、認知症の進行などによって本人が意思表示できなくなると、自分で給付金を請求することが難しくなります。

 

このような場合に備える制度が、「指定代理請求人制度」です。

あらかじめ指定された家族などが、本人に代わって、所定の保険金や給付金を請求できます。

ただし、請求できる保険金や給付金の範囲は、保険会社や契約内容によって異なります。

 

また、契約によっては、所定の疾病や障害状態に該当した場合の保険料払込免除についても、指定代理請求人が手続きできることがあります。

 

指定代理請求人は、一般的に契約時に指定します。契約後でも、被保険者本人の同意があれば、新たに指定したり変更したりできる場合があります。

 

指定方法や利用条件は保険会社によって異なるため、保険証券や契約内容を確認し、必要に応じて保険会社に問い合わせておきましょう。

 

本人が元気なうちに確認しておくことが、将来、必要な給付金を受け取れない事態を防ぐことにつながります。

 

※参考 生命保険文化センター


保険契約者代理制度も確認しておきましょう

生命保険会社によっては、保険契約者代理制度(特約)を設けている商品があります。

この制度は、契約者が認知症などにより契約に関する意思表示ができなくなった場合に、あらかじめ指定した契約者代理人が、契約者に代わって所定の手続きを行える制度です。

 

例えば、保険会社や商品によって異なりますが、

  • 住所変更
  • 解約
  • 契約内容の変更などの手続きができる場合があります。

ただし、この制度はすべての生命保険商品に付いているわけではなく、利用できる手続きの範囲も保険会社や商品によって異なります。

 

そのため、契約内容を事前に確認しておくことが大切です。

※参照 生命保険文化センター

すでに認知症が進んでいる場合:「成年後見制度」

もし、既に認知症が進んでしまい、保険会社が「本人の意思確認ができない」と判断した場合には、家族が勝手に手続きすることはできません。

 

そうした場合に用いられるのが「成年後見制度」です。

 

成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度の2つがありますが、すでに認知症などで判断能力が欠けているのが通常の状態にある場合は、任意後見制度ではなく、法定後見制度を利用することになります。

 

以下、法定後見制度を前提としてすすめていきます。

 

法定後見制度では、家庭裁判所を通じて家族や弁護士などの専門家が後見人に選ばれます。

 

選任された後見人が、本人にかわって、財産管理や契約手続きを代理で行います。

 

つまり、保険の手続きなども、後見人が本人に代わって手続きをすることになります。

 

ただし、後見制度には申立ての手続きや費用がかかり、利用には一定の時間などが必要です。

 

法定後見制度 法務省


認知症後に新しく保険に入るのは難しい

「これから保険に入って備えておきたい」と考えるご家族は少なくありません。

 

しかし、すでに認知症の診断を受けている場合には、新たに生命保険や民間の介護保険などに加入することは、基本的には難しいと考えておくのが無難です。

 

保険契約には、基本的に「告知義務」があり、契約時には現在の健康状態を正確に申告しなければなりません。

 

すでに、医師から認知症の診断を受けている場合、その事実を伏せて契約することはできませんし、たとえ申告したとしても、保険会社は高いリスクがあると判断した場合には、契約を断るケースがほとんどです。

 

つまり、「いずれ必要になるかもしれないから、そのときに入ればいい」と考えていると、いざという時には加入できない可能性が高いということです。

 

だからこそ、元気なうちにどう備えておくか、という視点がとても大切になります。

 


保険を活用するなら「契約者」にも注意

また、「親が被保険者」の保険を活用する際には、「誰を契約者(保険料負担者)にするか」も重要なポイントです。

 

たとえば、終身保険に加入する場合、契約者を子どもにしておくと、親が認知症になった後でも、保険の解約や名義変更といった手続きが進められます(保険契約者代理制度を利用しない場合)。

 

なお、親が亡くなり、死亡保険金を受け取る際、契約者、被保険者と死亡保険金の受取人の関係によって課税される税金の種類が異なります。

 

たとえば、

  • 契約者=子ども、被保険者=母親、受取人=子ども(契約者と同一人の場合):所得税の対象(相続税の対象ではない)
  • 契約者=子ども、被保険者=母親、受取人=父親の場合:贈与税の対象(相続税の対象ではない)

相続税になるケースは、契約者と被保険者が同じ場合です。

 

例えば、契約者が母親、被保険者が母親、死亡保険金受取人が子どもの場合です。

 

このように、契約形態によって税金の種類が違ってくるため、契約時には十分な注意が必要です。

 

保険は「いざという時の備え」として有効ですが、契約形態によって大きく結果が変わる可能性もあるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。


まとめ

親が認知症になっても、家族が自由に生命保険の手続きをできるわけではありません。

ただし、契約内容によっては、

  • 給付金などを請求する「指定代理請求人制度」
  • 解約や住所変更などを行う「保険契約者代理制度」

を利用できる場合があります。

これらの制度がなく、親本人が契約内容を理解して手続きすることも難しい場合には、成年後見制度の利用を検討することになります。

一方、死亡保険金は、親が亡くなった後に指定された受取人が請求するものであり、医療保険の給付金や解約返戻金とは手続きが異なります。

まずは保険証券や契約内容のお知らせを確認し、保険会社に次の点を問い合わせてみましょう。

  • 指定代理請求人が登録されているか
  • 保険契約者代理制度を利用できるか
  • 家族が請求できる給付金は何か
  • 解約する場合に必要な手続きは何か

 

親が元気なうちに確認しておくことが、将来の介護費用や財産管理で困らないための大切な備えになります。