保険は、いざというときに家計を支えてくれる重要な存在ですが、「本当に必要な保険はどれなのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
特に、親の介護や自分自身の老後を考えたときに、保険の見直しが必要になることがあります。
今回は、ライフプランを基に保険の必要性を考えるポイントを解説します。
貯蓄と保険と資産運用の基本的な役割

それぞれの金融商品は異なる役割を持ちます。
保険、貯蓄、資産運用はどれも家計を守るために重要ですが、ライフプランに応じてその使い分けが必要です。
生活保障(収入減少に備える)
万が一の収入減少に備えるための保険です。また、老後の生活を支えるために必要になります。
医療費や介護費用の補填
病気やケガ、介護に備える保険です。老後の医療費や介護費用が心配な方には、これらの保険が必要かもしれません。
資産形成(貯蓄や投資の目的)
貯蓄を目的とした保険や、資産運用を目的とする金融商品です。
資産形成を目指すなら、積立型の保険よりもNISAやiDeCoなどの投資の選択肢を考えることも重要です。
また、これらの保険が本当に必要かどうかは、各家庭のライフプランによって変わります。
※ 参照 生命保険文化センター
ライフプランと貯蓄、保険、資産運用の関係

保険は「なんとなく加入する」「勧められたから加入する」といった受け身の姿勢ではなく、自分や家族のライフプランに基づいて選ぶことが重要です。
ここでは、以下の3つの視点から、貯蓄・保険・資産運用のバランスについて考えていきます。
(1) 家族構成と必要保障額を考える
- 独身の場合
生命保険の必要性は低いものの、病気やケガで働けなくなった場合の生活費や治療費をカバーする保険(医療保険や就業不能保険)などは検討の余地はあります。
なお、会社の福利厚生制度や公的医療保険制度を確認し、過剰な保障にならないよう注意しましょう。
- 子育て世帯の場合
配偶者や子どもの生活を支えるため、生命保険の加入は非常に重要です。
ただし、必要保障額は遺族年金や現在の収入・貯蓄を踏まえて計算し、保険料とのバランスを取る必要があります。
なお、すでに十分な貯蓄がある場合は、保障を見直すことも大切です。
- 子どもの独立、定年後の場合
子どもが独立し、年金や貯蓄があれば、一般的には大きな生命保険は不要になります。
一方で、医療費や介護費用の増加が見込まれるため、今後に備えた保険や資産運用の必要性が高まります。
つまり、ライフステージに応じて、定期的な見直しを行い、必要な保障を適切に整えることが大切です。
(2) 公的保障などを考慮する
日本には、医療保険、介護保険、年金など、さまざまな公的保障制度があります。
民間保険を選ぶ前に、公的制度でどこまでカバーされるかを把握することが、過不足のない保障選びに繋がります。例えば、以下のような制度があります。
- 高額療養費制度
医療費が一定額を超えると自己負担が軽減されるため、高額な医療保険に加入する前に確認しましょう。
介護サービス費が一定額を超えた場合、自己負担が軽減されるため、民間の介護保険がどの程度必要かどうか再検討する必要があります。
- 障害年金、遺族年金
万が一の収入減少に備えるため、障害年金や遺族年金といった公的年金の支給内容を確認しておきましょう。
これらの年金制度を踏まえ、必要な保険を再検討します。
これらは代表的な公的保障制度ですが、他にも様々な制度が存在します。
お住まいの自治体独自の支援制度がある場合もあるので、地元の役所などで確認することをお勧めします。
(3) 貯蓄と資産運用のバランス
貯蓄・保険・資産運用は、それぞれ異なる役割を持っています。
これらを上手に使い分けることで、ライフプランに沿った安定した家計管理が可能になります。
- 貯蓄で備えられるリスク
数十万円程度の医療費や、家電の修理・買い替えなどは、日々の貯蓄で対応することができます。
ただし、貯蓄は元本が保証される一方で、インフレに弱いというデメリットがあります。
将来的に物価が上昇した場合、お金の実質的な価値が目減りする可能性もあるため、貯蓄だけに頼るのはリスクです。
- 保険で対応すべきリスク
長期入院や就業不能、高度障害、死亡など、一度に大きな支出が必要となるリスクには、保険を活用することが有効です。
保障が手厚すぎると保険料の負担が大きくなるため、「必要な保障額」をしっかり見極めて、無駄のない保障内容にすることが重要です。
中には「掛け捨て型の保険はもったいない」と感じる方もいらっしゃいますが、掛け捨て型保険は保険料を抑えながら、万が一に備える有効な手段です。
目的やライフプランに応じて、上手に活用することで、効率的な保険設計が可能になる場合があります。
- 資産運用で備えるリスク
老後の生活資金や、80歳以降に増加する可能性がある介護費用など、将来的に必要となるまとまった資金に備えるためには、長期的な視点での資産運用が有効です。
NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度を活用すれば、税制面での優遇を受けながら効率的に資産を増やすことができます。
ただし、資産運用は元本が保証されておらず、運用状況によっては元本割れのリスクもあります。
そのため、リスクを十分に理解し、自分の目的やライフプランに合った方法で、計画的に取り組むことが大切です。
不要な保険を見直すポイント

ライフプランを踏まえて、「今の自分に本当に必要な保険か?」を定期的に見直すことが大切です。
- 貯蓄型保険に過度に頼っていないか?
資産形成が目的であれば、NISAやiDeCoといった税制優遇のある運用制度の方が、柔軟かつ効率的に資産を増やせるケースがあります。
- 医療保険に過剰加入していないか?
高額療養費制度などもあり、ある程度の貯蓄がある場合は、最低限の医療保障でも対応できることがあります。
必要以上の医療保険に加入していると、保険料が家計の負担になりかねません。
保障内容を見直し、過剰になっていないか確認しましょう。
- 定年後の生命保険は適切か?
子どもが独立し、配偶者の生活資金も確保できているのであれば、大きな死亡保障は不要になることもあります。
その分、将来の医療費や介護費用に備えた保障内容に見直すことが、より現実的な対策となります。
保険選びで後悔しないために

保険は一度加入すると長期間払い続けることになりますので、慎重に選ぶ必要があります。
後悔しないためのポイントを押さえましょう。
- ライフプランを定期的に見直す
人生の節目ごとに、必要な保障は変わっていきます。
例えば、「子どもが独立した」「退職した」などといったライフステージの変化に応じて、保険や資産運用の内容を見直すことが大切です。
また、保険に加入する際には、あらかじめライフプランを作成し、そのうえで保険が本当に必要かどうかを判断することで、中長期にわたって適切な保険設計が可能になります。
さらに、ライフプランに変化が生じた場合には、その都度見直しを行うことで、過不足のない保障内容を維持することができます。
- ファイナンシャルプランナー(FP)に相談する
保険を選ぶ際には、独立系のファイナンシャルプランナー(FP)のような中立的な立場の専門家に相談するのがおすすめです。
独立系FPは商品の販売を前提とせず、ライフプランやキャッシュフロー分析をもとに、保険の必要性を含めた総合的なアドバイスを行います。
一方で、特定の保険商品について詳しく知りたい場合には、保険会社の営業担当者に相談するのも有益です。
自社商品の特性や活用方法について、詳細な情報を得ることができます。
- 必要最低限の保障を確保し、浮いたお金を貯蓄や投資に回す
保険にお金をかけすぎるよりも、貯蓄や資産運用で備える方が、より効率的な場合が多いと言えます。
10年以上使わないお金のように余裕があれば、その分をNISAに回すことで、将来に向けた資産形成を進めることができます。
こうした方法で、よりバランスの取れた資産管理が可能になります。
また、保険に関心が高い方の中には、複数の保険に加入している場合もありますが、その中で保障内容が重複していることも少なくありません。
無駄な保険料を削減し、必要な保障を最適に組み合わせるためにも、一度保険内容を見直すことをおすすめします。
まとめ
保険、貯蓄、資産運用は、ライフプランに沿って選ぶことが、無駄を減らし、将来に備えるための最適な方法です。
特に、介護費用や老後資金に関しては、公的保障を十分に活用し、必要な部分を最低限の保険で補い、余裕資金を使って資産運用を進めることで、より効率的に備えることができます。
判断に迷う場合は、専門家であるファイナンシャルプランナーに相談するのも、効果的な方法の一つです。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
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介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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