2021(令和3)年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉から介護期間が前回の調査(平均4年7ヶ月)よりも長くなっており、平均5年1ヶ月です。また、同調査の93頁から介護期間が10年以上は17.6%と前回調査から3.1ポイントも増加しています。このように介護期間が長引くと同時に介護費用の負担も大きくなります。
介護費用は、一時的な費用を除けば、「毎月かかる介護費用」×「介護期間」となります。また、介護はいつまで続くかは分かりませんので、介護費用がいくらかかるかを把握するのは難しいでしょう。ただ、介護費用は、結局、毎月の介護費用を抑えることで、「いつまで続くかわからない介護」の不安を解消するひとつになるのではないでしょうか。
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特別養護老人ホームの入所は申込順?
例えば、住民税非課税のひとり暮らしだったお母様が、在宅介護が難しい場合は、施設を考えるでしょう。そのときに、有料老人ホームか介護老人福祉施設(以下、特養という)を比べた場合、月々の費用が、比較的安価な特養を優先したほうが「いつまで続くかわからない介護」の不安を解消することになるでしょう。
ただ、特養は、地域によっては、順番待ちでなかなかすぐには入所できない等報道で見聞きします。特養への入所は、申し込み順ではなく必要度合い(緊急度)の高い人が優先される仕組みになっています。
また、自治体によって基準が異なりますが、一般的には、以下のような場合は入所に有利なるでしょう。
- 要介護度が高い
- 要介護者が一人暮らし(同居や隣接に家族がいない)
- 認知症が重度
- 介護者(介護する人)が高齢
- 介護者が要介護や病気など
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自治体の例
杉並区の場合
それでは、杉並区の例をざっくりとみましょう。
申し込みは各特養(複数施設の申込み可)にします。その後、一次評価は杉並区が行い(最高点100点)、「優先度の高い順A」、「中程度B」、「優先度が低いC」と分類し、結果を申込者に通知します。
例えば、要介護3で一人暮らしの杉並区在住の母親、子供は近隣に居住・パート週24時間勤務、認知症なし。このような場合、一次評価指標に当てはめてみると、要介護3(15点)、杉並区在住(20点)、在宅(5点)、一人暮らしで近隣等に家族がいる(0点)、日常生活動作(4点)、本人の行動(0点)、介護者の状況(3点)合計47点となります。
杉並区は何点以上がA等を公表していないため、「A」・「B」・「C」のうちどこに該当するか分かりません。その後、各施設では、区の行った一次評価、各施設の基準で行った第二次評価の結果等から委員会を開き検討し、各施設長は、男女別構成、施設の特性等を勘案し入所を決定します。
詳細は、杉並区の特別養護老人ホーム入所申込みのしおりをご参考にしてください。
足立区の場合
足立区の場合は次のようになっています。例えば、要介護3で一人暮らしの足立区在住の母親、子供は地方に居住、認知症なし。このような場合、一次評価指標(合計22点)に当てはめてみると、要介護3(8点)、介護者の状況(6点)、認知症症状(0点)、住まいの状況(0点)で合計14点となりました。
なお、足立区の場合、優先度区分はAランク(18点以上)、Bランク(12~17点)、Cランク(11点以下)と記載されています。よって、14点はBランクとなります。
詳しくは、特別養護老人ホーム 入所申し込みのしおり をご参照ください。また、得点が合計得点の50%以下であれば、Cランクとなっていますので、目安の示されていない自治体等の参考になるかもしれません。
一方、優先順位が低くなる要素として主なものは、以下通りです。
- 介護度が低い
- 要介護者と同居等
- 介護者が現役世代で健康
- 認知症なし
- 区外からの申込みなど
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まとめ
将来、介護が必要になり、在宅介護ができない場合は、施設介護(有料老人ホームか特養)が有力となるでしょう。特に、将来の介護費用が不安と感じている方は、まずは、比較的安価といわれている特別養護老人ホームを検討してみてはどうでしょうか。
介護費用は、「毎月の介護費用」×「介護期間」であり、「終わりの見えない介護」を考えれば、毎月の費用を抑えることで、介護費用総額も抑えることができます。
ただし、特養の入所に当たっては、申し込んだからといってすぐに入所できるわけではありません。特養は、申し込み順ではなく、優先度に応じて各施設で最終的に決定されます。特に、高齢の親御さんを持つ息子さんや娘さんは、事前の情報として各自治体のホームページで第一次評価指標をさっと目を通してみてはいかがでしょうか。