最近、「新NISAを始めたほうがいいの?」といった相談をよく受けるようになりました。
特に、テレビや雑誌、銀行の案内などで耳にする機会が増えたことから、「投資をしないと損をするのでは?」と焦りを感じる方も多いようです。
Aさんもその一人です。
これまでNISAには興味がなかったAさんですが、周囲の情報をきっかけに「やった方がいいのかな?」と思うようになりました。そして、次のような疑問が浮かんできたそうです。
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新NISAで投資をすれば絶対にお金は増えるの?
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口座はどこで開設するのがいいの?
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投資商品はどうやって選べばいいの?
今回はこのうち、「新NISAは絶対にお金が増えるのか?」という素朴な疑問について、じっくり考えてみたいと思います。
①新NISAは絶対に増えるのでしょうか?
(A)絶対に増えるわけではありません。

まず最初にお伝えしたいのは、新NISAで投資をすれば必ずお金が増えるわけではないということです。
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得られた利益に対する約20%の税金が非課税になる制度です。
例えば30万円で購入した株が40万円に値上がりし、売却した場合、通常は10万円の利益のうち約2万円が税金として差し引かれます。
NISA口座であれば、利益10万円すべてが手元に残るというわけです。
こう聞くと、魅力的に感じるかもしれません。
ですが、そもそも元本が保証されているわけではなく、投資である以上、価格が下がるリスクも当然あるということを忘れてはいけません。
特に今回の新NISAは、非課税期間が無制限になり、年間投資上限額も360万円に拡大されました。
確かに、いままで投資をして、身近に感じている人たちにとって、「非課税」は魅力があるでしょう。
初めて投資をする人は、税金がかからないと言っても必ず儲かるわけではないので注意が必要です。
投資の基本は「長期・積立・分散」

初めての方には、リスクの高い個別銘柄(株式投資)の投資ではなく、リスクが株式投資に比べて低い投資信託があります。
投資信託とは、私たちが出したお金をプロがまとめて運用してくれる仕組みで、複数の株式や債券などに分散投資されます。
詳しくは、(一社)投資信託協会をご覧ください。
投資の基本は「長期・積立・分散」です。
長く続けることで一時的な価格変動のリスクを抑え、一定の金額を毎月積み立てることで、購入タイミングを分散し、さらに複数の地域や資産に投資することでリスクを軽減します。
金融庁の資料によると、分散投資を5年間続けた場合は元本割れの可能性が残るものの、20年間続けた場合は元本割れしなかったとされています。
詳しくは、こちら(金融庁:つみたてNISA早わかりガイドブック)です。
けれど、これもあくまで過去のデータに基づくものであり、将来の保証ではないことは知っておいてください。
長期間続けることの難しさ

投資は「当分使わないお金」で行うのが原則です。
しかし、人生には予期せぬ出来事も起こります。
突然の病気やケガ、リストラ、収入の減少など、思いがけない出費が発生することもあるでしょう。
また、若い世代であれば、結婚や住宅購入、子どもの教育費といった将来的に予定されている大きな支出もあります。
中高年になると、親の介護費用や自分自身の医療費など、現実的な問題が増えてきます。
たとえ投資を始めたとしても、数年にわたって相場が低迷すれば、「やっぱり預金のままにしておけばよかった…」と感じることもあるでしょう。
どんなに制度が魅力的でも、「続けること」そのものが難しい。
それが投資の現実なのです。
投資の前に「お金の色分け」を!

だからこそ、まずやってほしいのがお金の色分けです。
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生活費など、すぐに使うお金
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病気やケガなど、万が一に備えるお金
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2~3年以内に確定している支出(車の買い替えなど)
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当分使わないお金(=投資に回せるお金)
この中で、投資に回してよいのは「当分使わないお金」だけです。
反対に言えば、このお金が捻出できないのであれば、まずは家計を見直すべきタイミングだということになります。
家計が赤字なら、まずは収支の改善を

仮に毎月の収支が赤字であるなら、新NISAを始める前に、家計の改善を最優先にしましょう。
固定費である携帯電話料金や生命保険の見直し、無駄な出費の削減が有効です。
最近は家計簿アプリなど、無料で使える便利なツールもあります。
まずは毎月の収支を黒字にすること、これが投資よりも先に取り組むべき大切なステップです。
まとめ
新NISAを始める前に、毎月の収支がプラスになっているか確認しましょう。
プラスでない場合は、NISA等の投資よりも先に収支を改善してプラスになってからNISAを考えましょう。
一方、すでにお金の色分けが終わっている人は、新NISAについて、じっくりと検討してみてはどうでしょうか。
短期ではなく、長期にわたって投資することや地域の分散、一定の時期に一定額購入する方法でリスクを軽減して10年後、20年後の資産を形成を考えてみてはどうでしょうか。
ただし、投資である以上元本割れの可能性はあることを認識しておきましょう。