父が入所していた自立型のケアハウスから、突然電話が入りました。
様子が少しおかしいため、救急車で病院に運んだという連絡でした。
父は当時、要介護2で、アルツハイマー型認知症と診断されていました。
「軽い脳梗塞の可能性があります」と聞き、胸がざわついたのを覚えています。
「なんともないよ」という父の声
緊急入院した翌日の昼ごろ、父から電話がありました。
「病院にいるけど、なんともないよ」
声もしっかりしていて、会話も普通でした。
その様子を聞いて、私は正直なところ、少し安心してしまいました。
この時点では、事態を深刻に受け止めきれず、兄にも連絡を入れませんでした。
数時間後に伝えられた、厳しい現実
それから数時間後、病院から再び電話がありました。
状況は一変しました。
脳梗塞を発症しており、治療をするかどうかを今すぐ決めてほしい。
時間が経てば手遅れになる可能性がある。
そう告げられました。
さらに、医師から続けて説明がありました。
手術をすれば助かる可能性はある。
ただし、成功するとは限らない。
場合によっては後遺症が残る可能性もあり、最悪の場合、状態が悪化することもゼロではないということでした。
その言葉を聞いたとき、頭の中で何かが止まったような感覚になりました。
「決めてください」と言われても、決められない
さっきまで普通に話していた父。
それなのに、リスクを伴う手術を選ぶかどうかを、今すぐ決めなければならない。
しかも、兄とはすぐに連絡が取れませんでした。
家族としての考えも、方針も、何も共有できていませんでした。
父は昔、「体が不自由になるなら、治療はしなくていい」と言っていたことがあります。
でも、その言葉が本心だったのか、それとも家族に迷惑をかけたくないという遠慮だったのか、その場では判断できませんでした。
一方で、できることなら元の姿に戻ってほしい、少しでも元気な状態でいてほしい、そんな気持ちも強くありました。
しかし医師から、手術には失敗の可能性があること、たとえ成功しても重い後遺症が残る可能性があることを告げられ、頭の中はさらに整理がつかなくなりました。
どちらを選んでも、あとから「本当にこれでよかったのか」と自分に問い続ける判断になる。
そう感じていました。
判断材料がない中での決断
医師からは、時間をかけて悩んでいる余裕はないと伝えられました。
助かる可能性がある一方で、失敗する可能性もある手術。
どちらを選んでも、後悔が残るかもしれない判断でした。
迷った末、私は、手術ができる病院へ転院するという決断をしました。
後になって残った思い
その判断が正しかったのかどうかは、今でも分かりません。
ただ一つ、はっきりしていることがあります。
それは、家族として判断するための準備が、あまりにも足りなかったということです。
もし事前に、父がどこまでのリスクを受け入れたいと考えていたのか。
もし自分で決められなくなったとき、誰に任せたいのか。
兄がどう考えているのか。
そうしたことを、一度でも話し合っていれば、あの場面での迷いは、確実に少なくなっていたと思います。
家族会議は、判断を奪うものではない
家族会議というと、重たい話をしなければならないと思われがちです。
でも実際には、答えを決めきるための場ではありません。
考え方を知っておくための場です。
価値観を共有するための時間です。
それがあるだけで、いざというときに「一人で背負わなくて済む」ようになります。
なぜ、元気なうちに必要なのか
病気や介護は、突然やってきます。
そして判断を迫られる場面では、考える時間も、話し合う余裕もほとんどありません。
だからこそ、元気なうちに、平常心で話せるタイミングで、家族会議をしておく必要があると、心から感じています。
家族会議をどう始めればいいのか分からない方へ
実際には、どう切り出せばいいのか分からない。
何を話せばいいのか見当がつかない。
話すことで揉めそうで不安。
そう感じて、動けない方がほとんどです。
私自身も、まさにそうでした。
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すべてを決める必要はありません。
ただ、「話す準備」をするだけで十分です。
判断を迫られたとき、一人で決めずに済むように。
そのための時間として、ご活用ください。
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