こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)・行政書士の河村修一です。
親の老老介護・遠距離介護を実際に経験した立場から、相続手続きや遺言書の作成、財産管理に加え、介護費用の見通しや保険の判断、老後資金の準備まで幅広くお手伝いしています。
「手続きとお金、両方の相談ができる窓口」として活動しています。
🟩 親の介護費用が心配な方へ
「いくらかかる?何を準備すればいい?」
→ ライフプラン作成サービスへ
(親の年金・資産・施設費用を見える化して不安を安心に)
🟦 認知症になる前の財産対策を考えたい方へ
「家のこと、お金の管理、きょうだいとの話し合い…どう進める?」
→ 親の認知症と介護費用に備えるサポートプラン
🟨 相続や遺言について準備したい方へ
「遺言の準備も、相続手続きも一人で悩まない」
→ 遺言書の作成支援・相続手続きサポートへ
この記事も、そんなお悩みを持つ方のヒントになれば幸いです。
介護を理由に「やらない」より、「介護に備えるために使う」制度
50代になると、親の介護と自分の老後が同時に気になり始める時期です。
「親の介護でお金がかかるのに、投資なんてしている場合じゃない」
そう感じる方も少なくないかもしれません。
しかし、NISAやiDeCoは介護を理由に「やらない」よりも、介護に備えるために上手に使うべき制度です。
ここでいう「介護に備える」とは、将来の自分の介護に備えるという意味です。
つまり、「親の介護費用のため」ではなく、自分が介護される立場になったときに困らないように準備しておく制度といえます。
NISAとは?
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益に約20%課税される税金が非課税になる制度です。
2024年から新しくなり、「つみたて投資枠(年120万円)」と「成長投資枠(年240万円)」を合わせ、年間最大360万円まで非課税で投資可能になりました。
-
つみたて投資枠:金融庁の基準を満たした長期・積立・分散投資に適した投資信託
-
成長投資枠:上場株式やETFなど幅広い商品に自由に投資
どちらも元本保証ではありません。
値下がりするリスクもありますが、介護や老後資金は10~20年と長期で準備する性質のもの。
時間を味方につけた長期・積立・分散投資なら、リスクを抑えながらお金を育てることができます。
ここで注意したいのは、NISAは「短期間で儲けることを目的とした制度」ではなく、長期的な資産形成を後押しする制度として設計されていることです。
もちろん、成長投資枠を使って短期売買を行うことも制度上は可能です。
ただし、NISAの本来の目的は「時間を味方にして、将来の安心をつくること」です。
特に介護や老後の備えとしては、焦らず、長く続ける投資が向いています。
iDeCoとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で積み立てて老後資金を作る制度です。
60歳まで引き出せませんが、その「引き出せない仕組み」が老後資金を確実に残す強力な味方になります。
掛金は全額所得控除の対象で、節税効果もあります。
2027年1月からは、加入年齢が70歳まで延び、拠出限度額も企業型DCや企業年金等(DB)の全くない企業に勤める会社員の方は月6.2万円、公務員で月5.4万円に引き上げられる予定です。
運用先は定期預金や保険、投資信託などがあり、元本確保型も選べます。
投資信託を選んだ場合は、運用結果によっては元本割れの可能性がありますが、一方で定期預金や保険などの「元本確保型商品」もあります。
ただし、途中解約には注意が必要で、特に保険の場合は解約控除により元本を割り込む可能性もあります。
また、金融機関ごとに手数料が異なります。口座を維持するだけでも月に最低171円(内訳:国民年金基金連合会105円、信託銀行66円、金融機関手数料)がかかります。
運用期間が長くなるほど差が大きくなるため、手数料と商品ラインナップを比較して金融機関を選ぶことが大切です。
介護と老後資金、どちらを優先すべき?
基本的に介護費用は親の財産から賄うのが原則です。
子ども世代は、自分の老後の備えを止めてまで親を支援すると、将来の生活に大きな負担が残ります。
親に資産がある場合は、家族信託などで管理体制を整えることが大切です。
親が認知症になると、預金や不動産が凍結され、子どもが代わりに動かせなくなるからです。
家族信託という選択肢
親の介護や財産管理を考えるときに、近年注目されているのが「民事(家族)信託」という制度です。
これは、親が信頼できる子どもなどに自分の財産を託し、親のために管理や処分をしてもらう仕組みです。
具体的には、財産の所有者である親(委託者)が元気なうちに、自宅や預貯金などの名義を子ども(受託者)に変更します。
ただし、その財産から生じる利益(家賃収入や預金利息など)はこれまで通り、親本人(受益者)が受け取る形になります。
これにより、親が認知症になっても、財産が凍結されず、必要なときにきちんと使えるようになるのです。
たとえば、親が自宅と預金を信託し、子どもが受託者となるケースを考えてみましょう。
親はこれまで通り自宅に住み続けますが、将来もし認知症を発症して判断能力が低下した場合、受託者である子どもが信託契約に基づいて自宅を売却し、その売却代金を親の介護費用や老人ホームの入居資金に充てることができます。
このように、家族信託を利用しておけば、親が介護状態になった後でも「お金を動かせない」「施設費が払えない」といった事態を防ぐことができます。
家族信託にはいくつかの特徴があります。
まず、財産の名義を変えても、財産自体は親のためだけに使うことができます。次に、親が認知症になっても財産が凍結されないため、スムーズに管理や処分が可能です。また、信託契約の際に「二次受益者」を決めておくことで、親が亡くなった後の財産の引き継ぎ先を指定でき、遺言と同じような効果を持たせることもできます。
さらに、遺言ではできない「次の次の代」まで承継先を決めることも可能です。税金面でも大きな負担はありません。不動産の名義を親から子どもに変えても、不動産取得税や贈与税、譲渡所得税はかからず、必要なのは登録免許税のみです。
そのため、家族信託は「節税対策」ではなく、「財産を動かせる仕組みを作る制度」として活用するのが正しい理解です。
ただし、家族信託には注意点もあります。
まず、契約を結ぶ際には親に判断能力が必要であり、認知症が進行してからでは手続きできません。また、信託口座を開設する金融機関によっては手数料が発生したり、開設に時間がかかる場合があります。受託者(子ども)は財産を管理する立場として「善管注意義務」「忠実義務」「公平義務」などの責任を負います。親のために誠実に管理する義務があるため、信頼関係が何よりも大切です。
さらに、すべての財産を信託できるわけではありません。年金受給権や介護施設の入所契約といった「身上保護」に関することは対象外です。
また、成年後見制度のように裁判所の監督がないため、受託者が誠実に行動しているかどうかを第三者が確認する仕組みはありません。したがって、制度を導入する際は、契約内容を丁寧に設計し、信頼できる家族を選ぶことが何より重要です。
家族信託のもう一つの注意点は、導入時に一定の費用がかかることです。契約書の作成、登記手続き、専門家への依頼などで信託財産によって異なり、一般的には最低でも20万円~100万円程度の費用が目安になります。たとえば、自宅や複数の不動産を信託に含める場合や、信託契約書に細かい条件を設定する場合には、登記費用や専門家報酬が増える傾向があります。一方で、現金や預貯金などシンプルな構成であれば、比較的費用を抑えられることもあります。
費用だけを見ると高く感じるかもしれませんが、親が認知症になって財産が凍結されてしまうと、成年後見制度を利用する必要があり、手続きの煩雑さや毎年の報酬など、長期的な負担が発生します。
それを考えると、家族信託は「将来の安心を前払いしておくための制度」といえるでしょう。
このように、家族信託は「財産を守る契約」ではなく、必要なときに親のために財産を使えるようにしておく契約です。
親が介護施設に入るときや医療費がかかるときに、スムーズにお金を動かせる仕組みを整えておくことこそが、本来の目的です。
介護に備えながらNISA・iDeCoを活かす考え方
もし親に資産が少なく、将来的に介護費用を一時的に子どもが支援する可能性がある場合は、まずは元本保証の商品を前提に考えることが大切です。
介護が必要になるまでの期間は、5年以内かもしれませんし、10年先かもしれません。
どちらにしても、急な出費に備えて「お金を減らさない」「必要なときに使える」形にしておくことが重要です。
たとえば、10年変動型国債などの元本保証型商品は、安全性が高く、途中解約も比較的容易です。
数年以内に介護費用や医療費が発生する可能性を考えると、資金を保全しながら備えられる国債は、堅実な選択といえるでしょう。
特に「親の介護に備えてお金を減らしたくない」という場合には、まずこのような安全資産での準備を基本にするのが安心です。
そのうえで、一定のリスクを取ることができる人であれば、NISAを活用して資産の一部を運用するのも一つの方法です。
NISAは途中で売却して現金化できるため、介護費用などが必要になった際にも柔軟に対応できます。
ただし、NISAで投資信託や株式を選ぶ場合は、元本保証ではないことに注意が必要です。
運用期間が短いほど価格変動のリスクは高まりますので、「余裕資金の範囲」で活用するのが原則です。
一方で、親に自宅や預金など十分な資産があり、財産管理の体制(家族信託や任意後見契約など)が整っている場合は、NISAに加えてiDeCoを活用し、自分自身の老後資金を確実に積み上げることをおすすめします。
iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに、掛金が所得控除の対象になるなど、税制優遇が非常に大きい制度です。
親の介護費用を心配する必要がない状況であれば、時間を味方につけて老後資金を効率的に準備することができます。
つまり、「介護」と「老後」のどちらを優先すべきかは、親の財産状況によって変わるということです。
親の資産が少ない場合は、まず「いざという時の流動性」を確保し、安全資産で備える。余裕がある人は、NISAでリスクを分散しながら資産を増やす。さらに、親の資産に十分な余裕があり自分の将来を優先できる人は、iDeCoで長期的な積立を進める。
両方を冷静に整理しておくことが、子ども世代の家計を守る第一歩です。
介護と老後資金を切り離して考えるのではなく、親の財産・自分の収入・将来の支出をトータルで見渡す視点が、50代からの資産戦略では欠かせません。
まとめ
「親の介護」と「自分の老後」は、どちらも避けて通れないテーマです。
NISAやiDeCoは、単なる投資制度ではなく、将来に備えるための仕組みです。
介護が心配で始められないという方こそ、早めに制度を理解し、家族と話し合うことが大切です。
FP兼行政書士としてお伝えしたいのは、「投資と介護は別の問題ではなく、どちらも人生のリスク対策」ということ。
老後も親も守るために、あなたの家計に合った準備を一緒に考えていきましょう。
