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【比較】65歳前と65歳後の退職/雇用保険(失業手当)の違い

こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)・行政書士の河村修一です。

 

親の老老介護・遠距離介護を実際に経験した立場から、相続手続きや遺言書の作成、財産管理に加え、介護費用の見通しや保険の判断、老後資金の準備まで幅広くお手伝いしています。

 

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この記事も、そんなお悩みを持つ方のヒントになれば幸いです。

つい先日、このような質問をいただきました。

 

「64歳11カ月で退職するのと、65歳ちょうどで退職するのでは、雇用保険の扱いが違うと聞きました。本当ですか?」

 

これは、50代・60代の相談現場で必ずといっていいほど聞かれるテーマです。

 

この問いに答えるには、雇用保険(失業給付)の仕組みを理解しておくことが大切です。

 

特に65歳を境に、受け取れる給付の内容と金額が大きく異なります。

 

今回は「基本手当」と「高年齢求職者給付金」の違いを中心に、制度のポイントと損得をわかりやすく解説します。


65歳未満で退職した場合|基本手当(失業手当)が受け取れる

65歳未満で退職した人は、「雇用保険の被保険者」であれば、一般の失業給付である「基本手当」が支給されます。

 

支給要件は、原則として過去2年間に12か月以上の被保険者期間があること(自己都合退職の場合)。

 

受給日数は年齢や勤続年数などで異なり、下記のようになります。

勤続年数 受給日数(例:自己都合)
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

※特定理由離職者や会社都合退職の場合、日数はさらに手厚くなります。

※自己都合退職の場合、被保険者期間が1年以上3年未満であれば90日、10年以上で120日、20年以上で150日が目安となります。

 

基本手当の金額は、退職前6か月の賃金日額の45~80%が目安。

 

年齢や給与によって上限がありますが、日額で約6,000円~8,500円程度の支給を受けられることもあります。

 

なお、日額は年齢によって上限があり、例えば「60歳以上」の場合の上限は2024年度で7,186円/日です。

 

ハローワーク


65歳以上で退職した場合/一時金の「高年齢求職者給付金」に

65歳以降に退職した場合、受け取れるのは「高年齢求職者給付金」です。


これは「一時金」であり、支給額や制度の柔軟性において、基本手当と大きな差があります。

 

一時金支給額は、退職時の賃金日額をもとに「30日分〜50日分」として計算されます。たとえば、賃金日額が6,000円の場合は18万円〜30万円前後になります。

 

つまり、65歳を超えると雇用保険の「保障力」が弱まるということです。

東京ハローワーク 求職者給付に関するQ&A


どちらが得なのか?比較のポイント

比較項目 65歳未満 65歳以上
支給種別 基本手当(分割支給) 高年齢求職者給付金(一時金)
支給金額 数十万円~100万円超も 約10万円~30万円程度
再就職手当 あり なし(給付金自体が一時金)
併給制限 年金等との併給調整あり なし(一時金のため)

雇用保険の「基本手当(いわゆる失業手当)」は、65歳未満で退職した方が対象です。

 

しかも、再就職が早ければ「再就職手当」という一時金がもらえることもあるんです。

 

この再就職手当は、基本手当の残り日数に応じて金額が決まり、早く再就職するほど多く受け取れます。そのため、65歳になる前に退職して基本手当+再就職手当を活用した方が、トータルでは有利になるケースが多いのです。

Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~厚生労働省

 

ただし、ここで気をつけたいのが「退職理由」や「退職金の取り扱い」です。

 

たとえば、会社の規定で「自己都合退職だと退職金が減額される」ケースや、「早期退職は対象外」などの条件がある場合も。
制度だけを見て退職を急ぐと、逆に損をしてしまうこともあるため注意が必要です。

 

実際に退職を検討する際は、

  • 会社の退職金規程や就業規則の確認

  • ハローワークでの受給資格の確認

  • ご自身の年金受給状況や再就職の見込み

などを踏まえて、総合的に判断するのが安心です。

 

※再就職手当は、65歳未満で基本手当を受給している方が、早期に再就職した場合に支給されます。ただし、再就職先でも65歳未満であることが条件です。


年齢のカウントに注意/法律上は「誕生日の前日」に年齢加算

「64歳11ヶ月で退職したつもりが、制度上は65歳扱いだった!」というケースも。

 

年齢計算に関する法律では、「誕生日の前日」に65歳に達するとされます。

 

したがって、65歳に達する「前」=誕生日前々日までに退職しなければ、雇用保険の基本手当(失業給付)の対象にはなりません。

 

退職日が誕生日前日や当日ではすでに65歳到達後とみなされ、基本手当の支給対象外となる点に注意が必要です。

 

つまり、65歳の誕生日当日はすでに65歳ですので、退職日は「誕生日の前々日」までに設定しておく必要があります。

 

民法143条


まとめ

65歳という区切りを境に、雇用保険の仕組みは大きく変わります。


とくに「基本手当」を活用できるかどうかで、受け取れる金額に数十万円の差が生まれることも。

 

もし退職のタイミングを調整できるのであれば、64歳台での退職が合理的な選択となるケースが多いでしょう。

 

迷ったときは、退職後の働き方や年金受給時期などもあわせて、ファイナンシャルプランナー(FP)にご相談ください。


制度を正しく知れば、将来のお金の不安もグッと減らせますよ。

 

※制度の改正が行われることもあるため、実際の受給要件や金額については、退職前に必ずハローワーク等で確認しましょう。

 

また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。

 

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