トリプルパンチ世代の現実?
住宅ローンと子どもの教育費で、家計はすでにいっぱいいっぱい。
そんな中で、まだ先の話だと思っていた「親の介護費用」が、突然のように現実味を帯びてくる。
これが、今の30代後半から40代前半に見受けられるのではないでしょうか。
私自身も35歳のころに、親が脳出血で倒れ突然の介護生活が始まりました。
「住宅資金」・「教育資金」と「親の介護」が、同時に家庭を襲う可能性があります。
親が60代後半や70代前半に差し掛かると、健康の不安や通院、軽度の介助が必要になるケースが出てきます。
まだ介護保険を利用するほどではないけれど、今後の不安がよぎるようになるタイミングです。
そして実際に介護が必要になったとき、その費用をどうやって捻出するのかが家計にのしかかってきます。
介護費用は「親のお金」でまかなえると思っていませんか?

子どもは、親の介護費用は親の年金や貯金でどうにかなると考えがちです。
私自身も、当初はそう思っていました。
ところが現実は違い、私の場合は、年間で兄弟合わせておよそ60万円を負担しなければならない状況に直面しました。
実際、「親の年金収入だけでは介護費用がまかないきれない」というケースは少なくありません。
特に、在宅での介護が難しくなり、施設への入所が必要になると、費用は一気に跳ね上がります。
入所時にかかる一時金が数十万円から百万円以上、さらに月額の利用料が十数万円ということも珍しくありません。
「うちの親は持ち家があるから大丈夫」と思っていても、いざ介護が始まると、その持ち家の管理費や修繕費などがかさんだり、売却が思うように進まなかったりといった問題に直面する場合もあります。
親の財産状況をきちんと把握しないまま「なんとかなる」と楽観的に構えていると、最終的にはそのツケが子ども世代に回ってくることになります。
子どもの教育費と住宅ローンが家計を固定化している

では、そのツケを私たち子ども世代はどのように受け止めることになるのでしょうか。
多くの家庭では、住宅ローンの返済だけで毎月10万円前後が出ていきます。
これは、家計の中でも削ることのできない固定費です。
※参考 以下、国土交通省 「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」より、住宅ローンの年間返済額になります。
- 注文住宅:155.2万円(月約12.9万円)
- 分譲戸建住宅:125万円(月約10.4万円)
- 分譲集合住宅:123.6万円(月約10.3万円)
- 既存(中古) 戸建住宅:108.3万円(月約9.0万円)
- 既存(中古) 集合住宅:110.6万円(月約9.2万円)
さらに、子どもが小学生以下の場合、これから塾や習い事、中学受験、高校・大学進学と教育費が本格的に増えていきます。
公立・私立の選択によっても異なりますが、幼稚園3歳から高等学校第3学年までの 15 年間の学習費総額は約600万円から約2,000万円の幅があるとされています。
※参考 以下、文部科学省 「令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します」より、幼稚園3歳から高等学校第3学年までの 15 年間の学習費総額になります。
- 全て公立に通った場合:596万円
- 幼稚園は私立、小学校・中学校・高等学校は公立に通った場合:647万円
- 幼稚園・高等学校は私立、小学校・中学校は公立に通った場合:776万円
- 全て私立に通った場合:1,976万円
さらに大学進学にかかる費用も、国公立か私立か、文系か理系か、自宅通学か下宿かなどで大きく異なり、国立大学(自宅通学)の場合で約524.6万円、私立大学の医歯系(下宿)の場合では約2,949.8万円にのぼるケースもあります。
この2つの出費は、家計に占める割合が非常に大きく、しかもどちらも長期間にわたって継続的に発生します。
その状態で、急に親の介護が必要になり、月に5万円、10万円と追加の支出が求められるようになると、家計はあっという間に赤字に転落してしまう可能性があります。
しかも、介護はいつ始まるのかもわからず、どれだけ続くのかも予測がつきません。
3カ月で終わることもあれば、10年以上続くケースもあります。
最初は「貯金で何とかなる」と思っていても、それが長期化すれば、やがて資金繰りが厳しくなっていくでしょう。
そうなると、教育費を削るか、借金をするか、在宅介護を限界まで続けるかなど、どの選択をとっても家族にとっては痛みを伴う決断を迫られることになります。
親の介護に備えるために今できること

介護が必要になってから慌てても、できることには限界があります。
だからこそ、今のうちにやっておける備えがあるのです。
まずは、親の資産状況を確認しておくことが大切です。
年金はいくらもらっていて、貯金や持ち家の有無、医療保険の内容など、できる範囲で情報を整理しておきましょう。
次に考えたいのが、親の財産をどう管理するかという点です。
認知症が進んでからでは、親名義の口座からお金を出すことが難しくなるため、「家族信託」や「任意後見契約」といった制度を利用して、元気なうちに備える必要があります。
こうした制度を利用することで、将来、子どもが親の資金を使って介護サービスや施設費用を支払うことが可能になります。
また、家計全体のシミュレーションも有効です。
自分たちの収入、住宅ローンの支払い、教育費の見込み、そして親の介護費用が同時期に発生した場合、どこがボトルネックになるかを見える化することで、今のうちに見直すべき支出や準備すべき金額が明確になります。
まとめ
介護は本来、親自身の問題ですが、その費用が足りなければ、最終的に子どもの生活に直接影響を及ぼします。
子どもの教育環境を守り、自分たちの暮らしを破綻させないためには、「親のお金を、親の介護にきちんと使える状態をつくっておく」ことが、最大の防御策となります。
感情的には、「親のお金のことを話題にするなんて…」と戸惑う方もいるかもしれません。
しかし、家族の将来を冷静に見据え、準備をしておくことは、結果的に親の尊厳を守ることにもつながります。
年金と貯金でどこまで介護費用をまかなえるのか、それでも不足する場合はどうするのか。
本来は親自身が考えるべきことかもしれませんが、実際にはそうもいかないケースもあるのではないでしょうか。
だからこそ、家族で情報を共有しておくことで、いざというときの安心感にもつながります。
家族構成や環境は家庭ごとに異なり、正解は一つではありません。
それでも、もし親が介護を必要とするようになった場合、家族間でどのように支援していくのか、事前に話し合っておくことで、対応が格段にスムーズになります。
まずは、その現実をしっかりと直視し、小さな一歩からでも準備を始めてみることが大切です。
「まだ30代だから、親の介護なんて先の話」と思ってしまうかもしれません。
しかし、将来、「もっと早く考えておけばよかった」と後悔しないためにも。
今このタイミングで、住宅ローンや教育費とあわせて、親の介護費用についても、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
財産管理や将来の介護資金準備の重要性
介護費用の問題だけでなく、親の財産管理や遺言作成、将来の介護資金の準備も非常に重要です。
介護施設の選び方や費用に不安があれば、財産管理や遺言についても含めて専門家に相談することをおすすめします。
当事務所でも専門的な視点から最適な解決策をご提案しますので、どうぞお気軽にご相談ください。
また、もし今、親の介護が心配なら、ぜひ一度、「介護とお金そなえプラン」を検討してみてください。
あなたとご家族の未来の安心をサポートします。
介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
メディア掲載実績
私のコメントや情報提供を行った記事が、以下のメディアに掲載されています。詳しくはこちらをご覧ください。
【過去の一部の相談事例】
・介護費用がどれくらいかかるのか不安(50代女性)
・親の遺言書・生前贈与について(40代男性)
・資産運用について基本を整理したい(60代女性)など
・介護費用に関連する補足給付について(50代女性)
・医療費控除の概要について(50代女性)
・親の有料老人ホームの費用に関するキャッシュフロー表作成(50代夫婦)
・親の収入や資産から子どもへの援助に関するキャッシュフロー表作成(50代女性)
・親の保険と介護費用に関するご相談(50代女性)
・自宅の民事信託の活用と概要について(50代男性)
・所得控除と介護費用の関連について(60代女性)
・金融機関の解約手続きについてのご相談(60代女性)
・遺産分割協議書の作成に関するご相談(60代女性)
・親の介護費用と一時払終身保険の活用について(50代女性)
・老後資金のキャッシュフロー表作成(60代男性)
・年金受給に関するご相談(60代男性)など