「終活」という言葉が浸透し、多くの方が自分らしい人生の終わり方を考えるようになっています。
エンディングノートの作成や遺言書の準備、家の片づけ、保険の見直し、介護や相続の計画など、終活にはやるべきことが多岐にわたります。
しかし、終活を進める中で、思わぬトラブルや家族の負担を招くケースもあります。
本記事では、「終活の落とし穴」を紹介し、どこに注意して進めればよいかを解説します。
終活を始める前にぜひ確認してください。
エンディングノートはあくまで“意思表示”にすぎないが、相続トラブルの原因になることも

エンディングノートには、自分の思いや希望、葬儀のスタイルや財産のことを書き記せます。
しかし、法的拘束力は一切ありません。
たとえば「長男に多く相続させたい」と書いていても、正式な遺言書でなければ相続の際に反映されることはありません。
それにもかかわらず、エンディングノートの内容が家族間の紛争の種になることがあります。
相続人の中には、「故人の意思を尊重すべきだ」と主張する人もいれば、「法的には無効だ」と反論する人もいます。
その結果、相続手続きが長引き、家庭裁判所で争うことになるケースもあるでしょう。
エンディングノートは、あくまで家族とのコミュニケーションのためのツールと考え、財産の分配については法的に有効な遺言書に記載するなど、適切な対応を行うことが重要です。
遺言書の書き方ひとつでトラブルの火種に

遺言書を作成する人は増えていますが、内容の不備や形式ミスで無効になるケースが少なくありません。
特に自筆証書遺言は、書き方のルールが細かいため、日付の記載漏れや訂正方法の誤り、財産の特定不足などがあると無効になります。
以下、自筆証書遺言書を書くときの確認事項です。
- 本文はすべて自筆で書いた(財産目録は自筆でなくても可。ただし、各ページに署名・押印が必要)
- 日付は特定できる
- 署名した
- 複数人で署名していない(共同遺言していない)
- 押印した
- 本文の作成日と日付の押印は同一である※作成日、日付、押印した日が異なる場合、遺言の効力が問題となる場合がある
- 財産目録を通帳のコピーやパソコンで作成した場合、各ページに遺言者が署名・押印した
- 誤字、脱字箇所はないかを確認し、加除、訂正がある場合①その場所を指示し、②これを変更した旨を付記して③特にこれに署名し④変更場所に印を押した
- 財産は登記事項証明書、通帳で特定できる
- 財産をもれなく記載したうえで「その他遺言者に属する一切の財産」等の文言を入れた
- 相続人、相続を譲る人が続柄、氏名、生年月日等で特定できる
- 「相続させる」「承継させる」「遺贈する」の用語の使い分けをした
- 遺留分に配慮して、遺留分侵害額請求等の後のトラブルを回避する分割方法とした
- 工夫をした付言事項に想いを残し、後のトラブルが起きないように記載した等
例えば、「長男に自宅を相続させる」と書いたとしても、次男が遺留分侵害額請求をする可能性があり、家庭裁判所で争うケースもあります。
遺留分の請求などを考慮し、相続人全員が納得する形で作成することが重要です。
公正証書遺言を作成すれば、公証人が関与するため形式ミスを防げます。
また、家庭裁判所の検認が不要になり、遺言執行者を指定することでスムーズな遺産分割が可能になります。
個人情報漏洩リスク

終活では、エンディングノートやパソコン、スマートフォン、クラウドなどに多くの個人情報を記録します。
しかし、これらの情報を適切に管理しないと、漏洩や悪用のリスクが高まります。
特に、ネット銀行や証券口座、SNSアカウントなどが適切に管理されていない場合、第三者による不正アクセスのリスクが発生します。
また、デジタル資産の整理を怠ると、家族が必要な情報にアクセスできなくなるだけでなく、個人情報が流出し、悪用される可能性もあります。
そのため、家族の状況や自宅の環境、セキュリティの強化が必要かどうかを考慮して、エンディングノートの保管場所を決めることが重要です。
例えば、セキュリティが強化された場所(耐火金庫や信頼できる人に預けるなど)から、家族が比較的簡単にアクセスできる場所(隠し棚や家庭内の専用の箱など)まで、さまざまな選択肢があります。
重要なのは、「家族がすぐに見つけられる」・「第三者による盗難や不正アクセスを防げる」という2つの要素をうまくバランスさせることです。
この点を踏まえて、あなたのライフスタイルに最も適した方法を選ぶことをお勧めします。
介護費用の見積もりが甘く、資金不足に陥る

終活と並行して、介護の準備は極めて重要です。
介護は突然始まり、想像以上にお金がかかることもあります。
在宅介護であっても月5万~10万円、施設入所では月20万円以上かかることも珍しくありません。
さらに、認知症などで本人の判断能力が低下してしまうと、資産管理が難しくなるという問題があります。
本人が元気なうちに、家族が財産を管理できるよう、民事信託や任意後見制度の活用を検討することが大切です。
家族と話し合わずに一人で完結してしまう
せっかく準備した終活も、ご家族がその内容を知らなければ意味がありません。
たとえば、「施設に入るつもりだったのに、家族は在宅介護を想定していた」といったすれ違いが生じると、混乱や負担を招くことになります。
終活を考える際には、ご家族と十分に話し合い、自分の希望をしっかり伝え、家族の意見を聞いて、意思疎通を図ることが最も重要です。

まとめ
終活は「相続の準備」と思われがちですが、実は介護・財産管理・家族の理解・個人情報の管理まで含めた総合的な計画です。
一つでも抜け落ちると、せっかくの準備が思わぬトラブルにつながることもあります。
「自分にはまだ早い」「元気だから大丈夫」と思っているうちに、認知症や病気で判断力を失う可能性もあります。
後悔しない終活のためには、今のうちに全体像を捉えた備えをしておくことが重要です。
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