「お父さん、ちょっと介護の話をしたいんだけど…」
そう切り出した途端、不機嫌そうな顔をされた。
親との介護の話し合いは、なぜこんなにも難しいのでしょうか?
特に、「自分はまだ元気だ」と思っている親に、介護や認知症の話を持ちかけるのは至難の業です。
「そんな話、まだ早い」「余計な心配をするな」と言われ、話が進まない…。
でも、いざというときに準備ができていないと、もっと大変な思いをするのは家族です。
今回は、私の実体験を交えながら、親とスムーズに介護の話を進めるコツ をお伝えします。
親は「まだ大丈夫」と思っている

高齢の親が、自分の年齢や体の変化を素直に受け入れたがらないことは、よくあります。
私の親もそうでした。
以前、親が少しずつ物忘れが増えてきたように感じ、もしかして認知症ではないかと心配になり、検査をすすめたことがありました。
しかし、本人は「まだ元気だから検査なんて必要ない」と言って、まったく受ける気がありませんでした。
そこで私は、「75歳以上の人はみんな受けているんだよ」と伝えてみたのです。
すると、思いのほか素直に「そうだったか」と応じてくれ、「心配かけて申し訳ないね」と感謝の言葉までかけてくれました。
最初に受けたのは「長谷川式認知症スケール」という検査で、結果は30点満点中28点。
高得点で、私もひとまず安心しました。
ところが、その後に行ったMRI検査では「アルツハイマー型認知症」と診断されたのです。
この診断結果を本人にどう伝えるかは、本当に悩みました。
親自身は「自分には何の問題もない」と思っており、薬を飲むことにも強い抵抗があったからです。
けれども、このまま何もせずにいると、症状が進んでしまう可能性もあるため、「やはり、きちんと伝えよう」と心を決めて話しました。
ところが、親は「そんなはずはない」と否定し、なかなか現実を受け入れることができませんでした。
それでも、「薬を飲むことで症状の進行を遅らせることができる」と丁寧に説明するうちに、少しずつ理解を示すようになり、最終的には「そうか、それなら飲んでみる」と納得してくれました。
この経験を通して、本人のプライドや不安に寄り添いながら、少しずつ理解を得ていくことの大切さを実感しました。
同時に、こうしたデリケートな場面では、慎重な対応が何よりも求められるということを改めて感じました。
親のプライドを傷つけない話し方

介護について親と話をする際には、言い方に工夫が必要です。
特に、まだ元気で働いている親に対しては、伝え方に十分な配慮が求められます。
そんなときは、「もし将来介護が必要になったとき、どのくらい支援が必要なのかを今のうちに考えておきたいんだ」などと伝えると、親のプライドを傷つけず、話を受け入れてもらいやすくなります。
ただし、親子の関係性によって反応は変わるため、慎重な対応が大切です。
また、第三者の力を借りることも非常に効果的です。
家族の言葉には反発しがちな親でも、医師やケアマネージャー、信頼できる親せきなど、外部の人の意見には素直に耳を傾けることがあります。
私自身も、介護の話を切り出す際には、信頼できる親せきの意見を交えて話を進めました。
その結果、親も抵抗感なく話を聞いてくれるようになり、スムーズに話し合いを進めることができました。
大切なのは、親の気持ちや考えを尊重し、一方的に伝えるのではなく、共に考えながら歩調を合わせていくことです。
これが、介護に関する話を円滑に進めるための大きなポイントになると感じています。
高齢者の運転問題も難しい
親が高齢になると、運転の問題が避けられなくなります。
私の親も、年齢を重ねても「まだ自分は大丈夫だ」と思い込んで、車の運転を続けていました。
幸いにも、その時ちょうど車が故障してしまい、そのまま車を手放す流れとなり、大きなトラブルにはならなかったのですが、もし車が故障していなければ、強制的にでも何とかしなければならない状況だったため、警察などにも相談していました。
田舎では車がないと生活に困ることも多いのが現実ですが、高齢になった親には、運転をさせないことが最も重要です。
運転を続けていることで、親が事故を起こすリスクが高まり、周囲の人々にも危険が及ぶ可能性があります。
これを防ぐために、できるだけ早い段階で運転をやめてもらうことが必要です。
運転をやめたことで、親は少し元気がなくなり、「自分も年老いたかもしれない」と感じるようになったと言っていました。
このように、親が運転をやめることで生活にどんな変化が起こるのかを事前に考えておくことが大切です。
現実的には、特に親が元気であれば、車の運転をやめてもらうのは難しい交渉です。
しかし、親の安全と周囲の人々の安全を最優先に考え、しっかりと向き合っていく必要があります。
介護に向けた準備を早めに進める

介護の話し合いをスムーズに進めるためには、時間があるうちに少しずつ準備を進めることも大切です。
親が元気なうちに、どんな介護が必要になるか、どのような施設を利用するのか、財産管理や相続の問題についても早い段階で話しておくことが、後々のトラブルを避けるために重要です。
私の親も、最初は「まだ元気だ」と思っていましたが、80歳を超えたころから少しずつ体力が衰えていくことを実感し、介護や相続に対する意識も変わりました。
早期に話し合いを始めることで、親も納得しやすくなると感じました。
介護における家族の協力
介護は一人ではできません。
家族全員で協力し合いながら進めるものです。
私自身も、親の介護については兄と相談し合い、兄弟で役割分担をしながら進めていくようにしました。
家族で協力していると、親自身も安心感を感じ、ストレスも減少します。
特に介護の負担が大きくなったときには、定期的に家族で集まって状況を確認し、対策を講じることが大切です。
個々の家庭事情に合わせたサポート体制を作り、親にとっても快適な生活ができるように工夫していきましょう。
まとめ

親との介護の話し合いをスムーズに進めるのは簡単ではありませんが、次の工夫をすることで、話し合いが進みやすくなります:
- 嫌がる検査などは「〇歳以上の人は、みんなやっている」など伝える
- 親のプライドを傷つけない話し方をする
- 第三者をうまく活用する
- 生活の変化を考えながら話す
- 介護に向けた準備を早めに進める
- 家族全員で協力する など
これらのポイントを意識して、親との話し合いを進めるとともに、介護は家族全員で協力して取り組むものだということを忘れずに。
親の気持ちに寄り添いながら、できるだけ早い段階で話し合いを始めていくことが重要です。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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