親が倒れた。突然始まった介護と施設探し

老人ホームを探すきっかけは、親が介護になったときでしょうか。
ある日突然、親が脳梗塞で倒れてしまい、回復期リハビリ病院を退院するタイミングで「家での介護は無理だから、施設に入ってもらうしかない」と判断することがあります。
そんなとき、多くの方は慌てて動き出します。
施設の資料を取り寄せ、電話で問い合わせ、見学の予約を取り、パンフレットを読み込む。家族とも集まって相談し、候補の施設を見に行く……。
これは誰もが通る、ごく普通の流れです。
けれどそのまま、「ここでいいです」と勢いで契約してしまうと、あとになって「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。
焦って決めた後に気づく、施設選びの落とし穴

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親と施設の雰囲気が合わず、入居後に元気がなくなり、認知症が進行してしまった
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経営が不安定な事業者だったため、親会社の変更などで施設の方針や職員が変わった
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毎月の費用のほかに、おむつ代やリネン代、アクティビティ費などで追加請求が発生し、当初の想定よりも高額になった
このような事態にならないよう、一度立ち止まり、情報を整理してから判断することが大切です。
有料老人ホームの費用は安くないので、慎重に検討することをお勧めします。
すぐに決められないときは、ショートステイの活用も
急いで施設を探さないといけない状況でも、「焦らずに選びたい」とケアマネジャーに正直に伝えてください。
リハビリ病院の相談員に、いったんショートステイに入れる方法があるかも確認してみましょう。
「どうしてもすぐに入居しないと…」と思い詰めていると、施設側の営業トークに押されて決めてしまうことにもなりかねません。
また、老人ホーム選びをサポートしている士業や、終活・老後資金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)、終活ライフケアプランナーなどの専門家に相談するのも、一つの方法です。
第三者の視点が加わることで、判断がしやすくなります。
老人ホームの費用、どれくらいが「現実的」?

まず大切なのは、親の年金や資産で「いくらまでなら毎月出せるか」を把握することです。
どうしても足りない場合は、子どもがいくら支援できるか話し合うことが大切です。
たとえば以下のようなケースを想定してみましょう:
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父親:80歳
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年金:年240万円(月20万円)
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預貯金:2,000万円
預金を100歳まで使い切ると仮定すると、あと20年。
2,000万円 ÷ 20年 = 年100万円(毎月約8.3万円)
これに年金240万円(毎月20万円)を加えると、毎月28万円までの支出が可能という計算になります。
ただし、突然の出費、施設の原状回復費、引っ越し代、葬儀代、成年後見費用などは加味していません。
仮に年間36万円の予備費を計上すると毎月の利用額は約25万円が上限になります。
施設情報サイトを活用しよう

予算を頭に入れて、希望施設の場所などから老人ホーム検索サイトで調べましょう。
- 老人ホーム検索サイト
「LIFULL 介護」
「みんなの介護」
https://www.minnanokaigo.com/search/tokyo/
- 「介護サービス情報公表システム」厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp
- 公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」
https://user.yurokyo.or.jp/search
これらのサイトから情報をピックアップして資料の請求、重要事項説明書、見学の日程などを決めましょう
東京都の場合は、東京都福祉局の重要事項説明書一覧表から見ることができます。
- 東京都福祉局 東京都有料老人ホーム重要事項説明書一覧
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shisetu/yuuryou/jyuuyoujikou/index.html
資料請求したら比較表を作ろう

施設選びの第一歩は、「いくつかの候補施設の特徴を一覧にまとめること」です。
これにより、施設ごとの違いが明確になり、家族間での情報共有もスムーズになります。
項目 |
A有料老人ホーム(介護付き) |
B有料老人ホーム(住宅型) |
事業主体 | 株式会社●● | 株式会社●● |
住所 | 東京都××(JR荻窪から徒歩15分) | 東京都××(JR●●から徒歩5分) |
一時金 | 300万円 | 200万円 |
月額費用 | 30万円(〜35万円:加算想定) | 25万円(〜30万円:加算想定) |
加算費用の例 | アクティビティ・おむつ代などで+5万円程度見ておくと安心 | 同左 |
職員体制 | 3:1 | 3:1 |
入居率 | 約90% | 約85% |
入居者の傾向 | 85歳以上が9割、要介護3以上が約5割 | 85歳以上が8割、要介護3以上が約6割 |
特徴 | 24時間看護師駐在、こだわりの食事、広くて充実した共有スペース | 駅近でアクセス良好、話しやすい介護スタッフ、協力医療機関との連携 |
※ここに掲載した表はあくまで一例ですが、ご自身で取り寄せたパンフレットや重要事項説明書の情報をもとに、ぜひこのような形で整理してみてください。
見学時に見るべき・聞くべきチェックポイント

見学は可能であれば家族で一緒に行き、一か所で半日くらいは時間をとっておきましょう。
私が老人ホームを見学したときは2~3時間くらいはかかりましたので、時間を余分に取っておくことをお勧めします。
また、お伺いしたときに施設内で見たい場所は遠慮なく伝え、事前にまとめておいた質問事項などを担当者や施設長に確認します。
必ず確認したことは、聞き流すのではなく記録(日時、担当者、天気など)しておくことです。
今後の予期せぬトラブルが起こったときに証拠にもなります。
見学後は家族間で再度資料を持ち帰って、すべてを満たす施設はないので、優先順位をつけて候補の施設を絞り、必ず体験入居をすることをおすすめします。
施設見学では以下のような点を確認しましょう:
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入居者の表情や雰囲気、活気
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職員の対応、清潔感、人数
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廊下や共有スペースの清掃状況や匂い
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食堂や浴室などの設備
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夜間の人員配置や看護体制
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看取り対応の可否
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医療機関との連携体制
- スタッフの退職率
- 入居者の退所理由
- 退所せざるを得ない病気等
- 運営会社や施設の財務状況
※上記確認事項は、一例です。
※参照 東京都福祉局 あんしん なっとく有料老人ホームの選び方
まとめ
老人ホームを探すきっかけは突然「親が介護になった」が多いのではないでしょうか。
在宅での介護が難しい場合は、施設介護の選択になるでしょう。
すぐに入れる施設があればすぐに決めてしまうかもしれません。
ただ、注意が必要です。
- 「親が施設の雰囲気に合わなくて元気がなくなり、認知症が進行したり」
- 「実は、経営基盤が脆弱な事業者で突然、親会社が変わったり」
- 「毎月の利用料にプラス料金があったり」等、
もう少し検討すればよかったと後悔する可能性があります。
すぐに施設に入れたいという、急ぐ気持ちをグッと抑えて、慎重に施設選びをすることをお勧めします。
老人ホームを選ぶ際には、老人ホームの情報サイトで情報を集め、事前準備をするとともに、見学当日は五感をフルに働かせてしっかりと確認しましょう。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
メディア掲載実績
私のコメントや情報提供を行った記事が、以下のメディアに掲載されています。詳しくはこちらをご覧ください。
※有料老人ホームを選ぶ際の注意点などが厚生労働省や各自治体(一例)でもホームページに記載されています。