こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)・行政書士の河村修一です。
親の老老介護・遠距離介護を実際に経験した立場から、介護費用の見通しや保険の判断、老後資金の準備に加え、親のお金の管理や遺言書の作成、相続手続きまで幅広くお手伝いしています。
「介護にかかるお金」と「将来の財産管理」を一緒に相談できる窓口として活動しています。
親が認知症になると、多くの方が「年金だけで介護施設に入れるのだろうか」「子どもが費用を負担しなければならないのだろうか」と不安を感じます。
この記事では、認知症になった場合の施設介護と、その費用を年金だけでまかなえるのかについて、具体例を交えながら解説します。
認知症介護は在宅か施設か?
認知症が進行し、一人での生活が難しくなると、介護を「在宅」で続けるか、「施設介護」に切り替えるかという選択を迫られることがあります。
特に子どもが仕事をしている場合は、在宅介護を続けることが現実的に難しくなるケースも少なくありません。
また、親自身には認知症の自覚がなく、「認知症ではないのに、なぜ施設に入らなければならないのか」と理解を示さないこともあります。
特養の介護費用は年金だけで賄えるのか?
まずは年金の平均受給額を確認しましょう。
・国民年金(老齢基礎年金)の平均月額は約5万9千円(令和6年度末)
・厚生年金の平均月額は約15万1千円(同上)
【ケース1】国民年金受給者(5.9万)でユニット型個室に入所した場合
80歳の単身のAさん(住民税非課税、預貯金1,500万円あり)が要介護5で特別養護老人ホーム(特養)のユニット型個室に入所すると、
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約10.8万円(令和8年8月~)
・日常生活費:約1万円
合計は約14万7千円。
年金収入との差額は約8.8万円の赤字で、預貯金を取り崩す必要があります。
【ケース2】国民年金受給者(5.9万)で預貯金300万(同条件)
Bさんの場合は、住民税非課税で預貯金300万円のため「居住費・食費」の軽減措置(特定入所者介護サービス費)があります。
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約3.8万円
・日常生活費:約1万円
合計約7万6千円。
年金との差額は約1.7万円の赤字です。
どちらのケースでも、サービス費の上限が高額介護サービス費により約1万5千円となるため、実際には負担が軽減されます。
結果、Aさんは実質約7.4万円の赤字、Bさんは約0.4万円の赤字となります。
【ケース3】厚生年金受給者(15.1万)
80歳のCさん(単身、預貯金ゼロ)が要介護5で特養ユニット型個室に入所すると、
・サービス費:約2万8千円
・食費・居住費:約10.8万円(令和8年8月~)
・日常生活費:約1万円
合計は約14万7千円で、年金収入の範囲内に収まります。
ただし、各ケースとも各施設との契約のため、施設代が増える場合もあり、あくまでも上記数字は目安になります。
<多床室の場合>
上記の条件と同じであるAさんの場合、
- サービス費(約2.6万円)
- 食費・居住費(約7.4万円:令和8年8月~)
- 日常生活費(約1万円)
- 1ヶ月(30日)合計約11万円となり、毎月約5.1万円の赤字で預貯金の取り崩しとなります。
なお、高額介護サービス費で約1.1万円が還付されますので、実質約4万円の赤字ですが、預貯金が1,500万円あるので、単純計算では長期間の施設生活にも対応できる可能性があります。ただし、医療費や日用品代、施設ごとの加算などもあるため、余裕を持った資金計画を考えておくことが大切です。
一方、Bさんの場合は、預貯金が300万円なので「居住費・食費」の軽減があります。施設代は、
- サービス費(約2.6万円)
- 食費・居住費(約2.5万円)
- 日常生活費(約1万円)
- 1ヶ月(30日)合計約6.1万円となり、毎月約0.2万円の赤字です。
ただし、高額介護サービス費があるので、実質は、1万円の黒字になります。
※住民税非課税の方の場合、途中で預貯金額等が一定額を下回ると特定入所者介護サービス費の対象になりますが、ここでは考慮していません。
認知症の進行と症状について
親がアルツハイマー型認知症と診断されると、症状は徐々に進行していきます。
一般的に認知症の初期(発症から約0年~5年程度)は軽度の段階で、以下のような症状が見られるようです。
・数分から数日前に覚えたことを忘れる
・同じことを何度も繰り返し話す
・物をしまい忘れたり置き忘れたりする
・役所での手続きがうまくできなくなる
進行して中等度から高度中等度(発症から5年程度以降)になると、
・薬の管理ができなくなる
・季節や気候に合った服を選べなくなる
・風呂の温度調整やトイレの使用が難しくなる
さらに高度な段階(10年~15年以降)では、
・同居している家族が分からなくなる
・家でトイレができなくなる
といった症状が見られるようです。
確かに、私の親の場合も同様で、診断を受けてから約6年が経過した頃から「風呂に入らなくなった」「トイレがうまく使えなくなった」といった変化がありました。
認知症高齢者数の将来推計
政府オンラインによると、65歳以上の高齢者を対象にした令和4年度(2022年度)の調査の推計で、認知症の人の割合は約12%、さらに約16%が認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)に該当すると推計されています。
合わせると約3人に1人が認知機能に問題を抱えている計算です。
また、2022年時点の年齢階級別の認知症の有病率をみると、例えば、
- 80歳~84歳の男性は15.9%、女性は16.9%
- 85歳から89歳の男性は25.2%、女性は37.2%です。
となっており、高齢になるほど発症リスクが高まります。女性の場合、90歳までの生存率が高いため、かなりの割合が認知症を発症している状況です(出所:共生社会の実現に向けた認知症施策の推進 厚生労働省)。
50代や60代の子世代夫婦にとっては、両親ともに認知症になる可能性が十分にあり、長寿時代の認知症問題は避けて通れません。
まとめ
認知症の親の介護では、在宅介護を続けるのか、それとも施設介護を選ぶのか、家族が大きな決断を迫られることがあります。
施設介護には、比較的費用を抑えられる特別養護老人ホームなどの公的施設と、民間の有料老人ホームがあります。年金収入だけで介護費用をまかないたい場合は、まず公的施設を検討するとよいでしょう。
今回ご紹介したように、年金額や預貯金額、部屋の種類(ユニット型個室・多床室)によって自己負担額は大きく異なります。また、利用できる制度によっても負担は変わるため、早めに費用の見通しを立てておくことが大切です。
施設費用は施設ごとに異なるため、入所を検討する際は、希望する施設へ直接確認することをおすすめします。
親の介護費用や財産管理に不安がある方へ
介護費用は、年金だけでなく預貯金や利用できる制度、今後の介護期間によっても大きく変わります。
また、認知症が進行すると、親名義の預貯金の管理や相続対策など、新たな課題が生じることも少なくありません。
当事務所では、介護費用の見通しだけでなく、親の財産管理や遺言、老後資金の準備まで含めてご相談をお受けしています。
「親の年金だけで施設費用をまかなえるのか知りたい」「介護費用は何年くらい続けられるのか確認したい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。親御様の状況に合わせて、将来の介護費用や財産管理について一緒に考えるお手伝いをいたします。
作成日2025年5月15日
更新日2026年7月4日
