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介護費用の積立、資産運用のみで大丈夫?

Q)自分が介護になったときの費用全額を「つみたてNISA」のみで準備するのはどうでしょうか。おおむね介護になるのは80歳以降ときいています。

 

A)万一のことを考えると全額は難しいと感じます。

仮に、若くして介護になれば、介護費用として考えていた「つみたてNISA」を取り崩すことになります(他に緊急資金などで足らない場合など)。そのとき、保有期間が短く、相場が下落時であれば、元本割れの可能性があります。介護費用の準備としては、あくまでも「長期・分散・積立」投資できることが前提です。加えて若くして介護になる場合に備えて、民間の介護保険への加入も組み合わせて検討するのも一つでしょう。

50代~60歳の人は介護は20~30年さき?

(公財)生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」速報版を参考にし一人当たりの介護費用総額を算出すると約580万円(内訳は、介護に要した費用のうち一時費用の平均は74万円、月々の費用の平均は8.3万円、介護期間は5年1ヵ月をもとに独自試算)になります。あくまでも参考程度と考えて頂ければと思います。また、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安約14万円(各施設との契約となり、多くておおよそ20万円くらい)。なお、詳細は厚生労働省 介護サービス情報公表システムをご参照ください。

 

さて、自分の介護費用を身近に感じだすのが何歳くらいからでしょうか。公的介護保険料の支払いが始まる40歳からでしょうか。それとも親や身内が介護になったときに自分の介護を考えるでしょうか。

 

考えだすタイミングは人によって違いますが、50代後半から60代に検討し始めるのではないでしょうか。それまでは、子どもの教育資金、自分が亡くなった後の遺族保障、病気で働けなくなったときの医療保障等、なかなか介護のお金まで手が回らないのが現実でしょう。また、介護は必ず全員が必要になるわけではなく、20~30年先だと考え人が多いかもしれません。 

準備している介護費用は減らしたくない

そうであれば、「新NISA(つみたて枠)」の制度を使って、「ドル平均コスト法」で購入しておけば絶対に安心でしょうか。

ドルコスト平均法とは、毎月など定期的に同じ金額を購入する方法です。毎月一定額を購入することによって、価格の安いときに多く購入し、価格が高いときには少なく購入することになります。

 

その結果、購入価格が平均化されます。例えば、金融庁のつみたてNISAのホームページ(つみたてNISA早わかりガイドブック)を参考にすると、保有期間が5年の場合は、元本割れのリスクがあります。一方、保有期間が20年の場合には、元本割れはありません。今後、どうなるかは分かりませんが、「長期・分散・積立」投資をしていれば、比較的利益は出やすいのではないでしょうか。

金融庁 資産運用シミュレーション(例えば、毎月約1.4万円を20年間、5%で積み立てると、約580万円になります。介護費用は約580万円)

 

介護費用が必ず20年~30年後、介護費用を「新NISA(つみたて枠)」を取り崩さずに捻出できれば元本以上のお金を準備することは可能かもしれません。ただし、仮に、5年後などに介護になった場合、「新NISA(つみたて枠)」を取り崩さす必要がある人はどうでしょうか。そのときにリーマンショック級のことが起きれば、元本が大幅に減っている可能性もあります。おそらく預貯金にしておけばよかったと後悔するでしょう。

 

まずは、お金の置き場所を明確にして、10年以上使わないお金を介護費用として「新NISA(つみたて枠)」を利用してはどうでしょうか。

まとめ

介護費用をNISAだけで捻出できるのでしょうか。あくまでもNISAは儲かった分に対して税金がかからないことです。儲からなかったからと言って損失を補てんしてくれる制度ではありません。ただし、「長期・分散・積立」投資によってリスクを軽減しながら預貯金よりも手元資金が増える可能性はあります。介護費用の準備の一つ目はお金の置き場所をきめることです。置き場所を決めた後に10年以上使わないお金をNISA等投資に加えて、若くして介護になった場合、民間の介護保険の利用するのも一つです。どうしても元本が減る可能性があるのが嫌な場合やいつでも引き出したい人は現預金で保有するのも一つです。個々人によって違いますのでご自身に合ったプランを考えましょう。