今から5年くらい前に息子(Mさん)さんから次のようなご相談がありました。母親は現在、介護保険施設に入所しており、2015年(平成27年)の8月から「居住費・食費」の自己負担額が増加したため、経済的な負担が重くて‥‥。介護保険施設の費用体系は「介護サービス費用の1割~3割」に「食費・居住費」「日常生活費」を加えた金額になります。介護サービス費用は、要介護度、居室のタイプなどによって異なり、また、居住費も居室のタイプによって異なります。基準費用額(施設と利用者の間で契約により決められますが基準となる額が定められています)は多床室の場合、1日855円、ユニット型個室であれば1日2,006円になります。食費の基準費用額は1日1,392円になります(※参照厚生労働省 介護サービス情報公表システム)。なお、本人あるいは同世帯の所得等によって、「介護サービス費」の自己負担上限額の適用(高額介護サービス費等)や「食費・居住費」の軽減(補足給付)があります。
今回、Mさんの母親は、介護保険施設に住民票を移しており、単身世帯で住民税非課税世帯です。「食費・居住費」の軽減の対象者であったため、毎月の介護費用を含めた施設代は7~8万円くらいでした。また、高額介護サービス費としてお金も戻ってくるので実質は5~6万円くらいでした。それが、2015年の介護保険改正で介護保険施設の「居住費・食費」の負担限度額認定の対象(軽減の対象)になるのは、次の①と②の要件すべて該当する必要があることへ変わりました。
①所得要件・・住民税非課税の方、ただし、住民税課税世帯や別の世帯の配偶者が住民税課税の場合は対象外
②資産要件・・「預貯金等」単身(配偶者がいない場合)で1,000万円以下、夫婦で2,000万円以下の方、つまり、預貯金額等が1,000万円超(夫婦の場合は2,000万円超)になる場合は対象外です。Mさんの母親は非課税ですが、父親は自宅で1人で暮らしており、住民税課税世帯です。よって、①の所得要件において但し書き以下の別世帯の配偶者が住民税課税の場合は対象外となり、「居住費・食費」の軽減はなくなります。結果、「居住費」は1日500円くらい、「食費」も1日1,000円くらい増加します。このように介護保険の改正によって利用者の負担増となりました。
さらに2021年の介護保険の改正でも利用者負担増となります。一つは「高額介護サービス費」(※2017年8月から上限額が44,400円に引き上げられています)の上限額の引き上げです。「現役並み所得者」の現在の上限額は44,400円ですが、2021年8月からは「現役並み所得者」の要件を
- 年収383万円以上770万円未満(世帯の上限月額44,400円)
- 年収770万円以上1,160万円未満(世帯の上限月額93,000円)
- 年収1,160万円以上(世帯の上限月額140,100円)
3分割します(杉並区のHPより参照)。高所得者の自己負担額の上限の引き上げです。もう一つは介護保険施設における「居住費・食費」の資産要件が2021年8月から変わります。具体的にはこちらを参照してください(申請が必要)。このように利用者の負担増が続く中(今後も続くと思われます)、申請の手続きを忘れないようにすることが軽減の第一歩です。例えば、同じ月に利用者の自己負担額が一定の額を超えた場合に超えた分を払い戻す制度、「高額介護サービス費」があります。高額介護サービス費の該当者には、サービス利用月の概ね2~3ヶ月後(市区町村により異なり、例えば足立区のHPによると4~5か月後に通知と記載)に市区町村より(支給)申請書が送付されます。初回のみ申請書の返送が必要です。私の経験ですが、老老介護の場合、役所からの通知などがよくわからなく申請せずに忘れているときもあります。また、申請の時効があり、時効は、サービス利用月の翌月1日から2年間となっています。なお、 2回目以降は自動的に支給されます。ただし、以下のものは、高額介護サービス費の対象外となります。
- 福祉用具購入費や住宅改修費
- サービスの支給限度基準額を超えた部分(10割自己負担の部分)
- 施設利用の際の食費・居住費、日常生活費等
介護サービス費用だけでも数万円のお金が毎月、継続してかかります。申請できるものは忘れずに行いましょう。また、お住まいの自治体独自の制度等がありますので、見落とさないようにしましょう。