介護のための帰省代は医療費控除になるの

Q&A)介護 医療費控除の対象は?

【質問1】

ご相談者は現在、無年金の78歳の母親(要介護5:某地方都市、老健入所中)を遠距離介護している息子さん。

息子さんが母親の生活の面倒をみています。

 

2ヶ月に1度、飛行機で母親の様子をみるために帰省するので、飛行機代が大変です。

そこで、この飛行機代は医療費控除できないでしょうか。

 

【回答1】

医療費控除の対象にはなりません。

通院費が医療費控除の対象になるのは、本人(ここでは母親)が診察・治療を受けるための通院費に限定されています。例外として、介護を必要とする人に付き添う家族の交通費等があります。

あくまでも、診察・治療を受ける目的で病院等に通う交通費でなければ、医療費控除の対象にはなりません。

 

飛行機代であれば、介護割引を航空会社に申請するのがよいでしょう。

通常料金に比べ約4割強安くなります。各航空会社にて詳細をご確認してください。

 

【質問2】

要介護3の母親がデイサービスに行くため、父親が自家用車で連れて行ってます。その場合のガソリン代は医療費控除になるのでしょうか。

 

【回答2】

医療費控除の対象にはなりません。

公共交通機関(バス・電車)などの「人的役務の提供の対価」であれば、医療費控除の対象になります。「人的役務の提供の対価」とは、「他人の労力に対する支払い」です。

 

ガソリン代は「人的役務の提供の対価」ではなく、ガソリンの購入対価になりますので、医療費控除の対象にはなりません。また、タクシー代金は、例外を除き、通常、医療控除の対象にはなりません。

 

【質問3】

病院に入院している母親を、年末に子供が全員帰省したので、自宅で1日だけ過ごすための許可をとりました。

その時のタクシー代は医療費控除の対象になるのでしょうか。

 

【回答3】

医療費控除の対象にはなりません。

その理由は、診察や治療に直接関係する費用ではないからです。タクシー代は、あくまでも年末、家族で過ごす目的であり、治療等を受ける目的ではないので対象外になります。

医療費控除とは(セルフメディケーション税制は除く)

医療費控除は、納税者本人または生計を一にする配偶者、親族の医療費を支払った時に次の計算式で算出された金額が所得控除できます。

 

医療費控除額は医療費から保険金などで補てんされる金額を差引いて、さらに10万円(正確には、総所得金額等の5%と10万円のどちらか少ない方)を控除します。

 

上限額は毎年200万円です。医療費控除は年末調整はされませんので、確定申告が必要になります。医療費控除によって所得税や住民税が少なくなります。

 

所得税は所得金額が多い人ほど高い税率を適用して税金を計算するため、医療費控除額が同じでも所得金額の多い人ほど戻ってくるお金は多くなります。

 

一方、住民税は一律10%とされているため医療費控除額の10%くらい少なくなります。

 

さて、介護保険のサービス利用にかかった費用は、医療費控除に計上することがでるのでしょうか。

 

医療と関係のない介護サービス費は対象外となりますが、医療に関連する介護サービス費は医療費控除の対象となる場合があります。

 

参照国税庁(介護保険サービスの対価に係る医療費控除の概要 )それでは、居宅サービスと施設サービスの各々について具体的にみましょう。

 

居宅サービスの対価についての医療費控除

居宅サービスの対価について医療費控除になるのは、

  • 医療系サービスとして医療費控除の対象です。①訪問看護、介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】、介護予防居宅療養管理指導、通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】、介護予防通所リハビリテーション、短期入所療養介護【ショートステイ】、介護予防短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)、複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
  • ケアプランに位置付けられた上記①のサービスと併せて利用した場合のみ医療費控除の対象となります。訪問介護【ホームヘルプサービス】(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除きます。)、夜間対応型訪問介護、訪問入浴介護、介護予防訪問入浴介護、通所介護【デイサービス】、地域密着型通所介護(※平成28年4月1日から)、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護【ショートステイ】、介護予防短期入所生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限ります。)、複合型サービス(上記①の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)、地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)、地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)
  • 医療費控除の対象外です。訪問介護(生活援助中心型)、認知症対応型共同生活介護【認知症高齢者グループホーム】、介護予防認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、介護予防福祉用具貸与、複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)、地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスに限ります。)、地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスに限ります。)、地域支援事業の生活支援サービス。

 

 

参照国税庁HP(医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価 )

 

介護保険制度下での施設サービスの対価に係る医療費控除

①福祉系の施設である介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設における医療費控除の対象は、施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する金額です。

 

また、②医療系の施設である介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院における医療費控除の対象は、施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額になります。

 

参照国税庁HP(医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価)

まとめ

介護保険サービス費用は医療費控除になる場合があります。

  • 居宅サービスでは、医療系サービスを利用した場合やケアプランに位置付けられた医療系サービスと併用した場合は医療費控除の対象になります。一方、掃除、洗濯、買い物、調理などの生活援助中心の訪問介護や認知症高齢者グループホームは医療費控除の対象外です。
  • 施設サービスの場合、福祉系の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設においては、施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象です。また、医療系の介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院においては、施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額が医療費控除の対象になります。医療費控除はかなり複雑な制度になりますので、サービス事業者が発行する「医療費控除の対象となる金額」が記載された「居宅サービス等利用料領収証」、「指定介護老人福祉施設等利用料領収証」等で確認し大切に保管しておきましょう(確定申告書に添付するか、確定申告の際、提示する必要あり)。

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